
所沢の茶畑の先に、ぶどう園が4つも集まっていた。
狭山湖の北側に広がる、もう一つの所沢の農業風景。
最終情報確認:2026年10月20日|所沢市・埼玉県・所沢市まちづくり観光協会の公開情報を参照
所沢市の西側、三ヶ島(みかじま)と聞いて思い浮かぶのは何でしょう。
狭山茶の茶畑。狭山丘陵の緑。あるいは、トトロの森。
ところが、この地域にはもう一つ、夏から秋にかけて現れる風景があります。
頭上にぶどうの房が実る観光農園です。
しかも1軒だけではありません。狭山湖の北側には、4つの農園からなる「三ヶ島ぶどう組合」があります。巨峰やシャインマスカットなどを栽培し、季節になるとぶどう狩りが楽しめる地域なのです。[1]
茶畑の街だと思っていたら、ぶどうの産地でもあった。
ちょっと意外です。
では、なぜ三ヶ島にぶどう園が集まっているのでしょうか。そして、茶畑で知られる土地で、どんなぶどうが育っているのでしょう。
まず知っておきたい答え
三ヶ島は、古くから農業が営まれてきた狭山丘陵北側の地域です。現在も茶畑や里山の風景が残り、その一角で複数の農家が観光ぶどう園を営んでいます。
ぶどう園は地域に点在するだけでなく、4農園が「三ヶ島ぶどう組合」としてまとまっているのが特徴です。
なぜ茶畑の街に、ぶどう園が4つもある?

最初の手掛かりは、場所です。
三ヶ島ぶどう組合があるのは、所沢市三ヶ島1丁目周辺。狭山湖の北側、埼玉県立芸術総合高等学校の東側にあたります。
所沢市まちづくり観光協会によると、組合を構成するのは次の4農園です。[1]
- 荻野園
- 師岡園
- 師岡ぶどう園
- 中山ぶどう園
いずれも三ヶ島1丁目にあり、農園同士が比較的近い範囲に集まっています。
観光協会の案内には、組合全体で約200人を受け入れられることや、合計50台分の駐車場があることも記されています。
つまり、たまたま1軒の農家がぶどうを育てているという話ではありません。
いくつもの農家が、地域としてぶどう狩りの来訪者を迎える仕組みを持っている。
ここが三ヶ島のおもしろいところです。
ただし、ぶどう栽培が最初にいつ、どの農家によって始められたのか、4園が集まった直接の理由までは、今回確認した公開資料からは特定できませんでした。
では、確かに分かっている土地の歴史をたどってみましょう。
三ヶ島の黒い畑は、ぶどうだけのためにあるわけではない
所沢周辺の畑で印象的なのが、黒っぽい土です。
武蔵野台地には、火山灰を母材とし、長い時間をかけて有機物が蓄積した黒ボク土が広く分布しています。
三ヶ島を含む所沢周辺の畑作を考えるうえでも、こうした台地の土壌は重要な背景になります。
しかし、ここで一つ注意したいことがあります。
「黒い土だから、ぶどうが必ず甘くなる」というわけではありません。
ぶどうの糖度や品質には、品種、日照、気温、水分管理、樹の状態、収穫時期など、多くの条件が関係します。
黒い土はこの地域の農業を理解する手掛かりですが、それだけで果実の甘さを説明することはできません。
ここは少し期待と違う答えかもしれません。
土の色を見ただけで、おいしさまで分かったら便利なのですが、農業はそう単純ではないようです。
もともと三ヶ島は、狭山茶の重要な産地だった
三ヶ島と茶の関係は、所沢市の文化財資料からも確かめられます。
所沢市文化財保存活用地域計画の資料では、狭山茶が江戸時代の文政年間に復興され、その栽培が所沢の三ヶ島地区を中心に広がったことが説明されています。
幕末には堀之内村の志村善次郎が茶の輸出を始め、昭和初期には三ヶ島村が埼玉県内でも上位の茶生産地になっていました。[4]
なるほど。茶畑のイメージには、きちんと歴史的な理由があったのです。
その一方で、現在の三ヶ島には観光ぶどう園もあります。
つまり、茶畑からぶどう畑へ一斉に置き換わったという話ではありません。
茶の産地としての歴史を持ちながら、ぶどうの栽培と観光も営まれている。
三ヶ島の農業は、私たちが思っていたよりも顔が多いようです。
では、どんなぶどうが採れる?同じ地域でも品種が違う

三ヶ島ぶどう組合の案内には、巨峰、ヒムロット、シャインマスカットなどの品種が並んでいます。
ところが、個別の農園情報を見ていくと、もう一つ気になることがあります。
収穫できる品種が、農園ごとに違うのです。
ここでは埼玉県のグリーン・ツーリズム情報と所沢市の公開情報をもとに、三ヶ島ぶどう組合の4農園を見てみましょう。
① 荻野園|高台で楽しむ巨峰とシャインマスカット
巨峰 シャインマスカット 高台の農園埼玉県の案内では、高台の見晴らしのよい場所でぶどう狩りを楽しめる農園として紹介されています。
収穫できる品種は巨峰とシャインマスカット。ぶどうだけでなく、トマトやナス、キュウリなどの野菜販売も案内されています。
ぶどうを採る楽しみと、周囲の農業風景を眺める楽しみ。その両方がある農園です。[2]
② 中山ぶどう園|採れる品種と買える品種が違う
ヒムロット 巨峰 藤稔中山ぶどう園は、狭山湖の近くにある、自然に囲まれた観光農園です。
埼玉県が紹介している収穫可能品種は、ヒムロット、巨峰、藤稔(ふじみのり)。
一方、直売品種としてはシャインマスカット、ピオーネ、ゴルビーなどが案内されています。[3]
ここが見逃せないポイントです。
「売っているぶどう」と「自分で収穫できるぶどう」は、必ずしも同じではありません。
シャインマスカットを買いたいのか、それとも巨峰を自分で収穫したいのか。目的によって農園の選び方が変わります。
③ 師岡園|三ヶ島ぶどう組合を構成する農園
組合加盟農園 三ヶ島1丁目師岡園も、三ヶ島ぶどう組合を構成する農園の一つです。
所沢市が2026年に案内した「ぶどうフォトコンテスト」の対象農園にも含まれています。[5]
ただし、2026年の個別の収穫可能品種や営業日程については、今回確認した資料だけでは確定できません。
希望する品種やぶどう狩りの実施状況を電話で確かめてから訪れるのが安心です。
④ 師岡ぶどう園|同じ「師岡」の名でも別の農園
組合加盟農園 三ヶ島1丁目こちらは「師岡ぶどう園」。
先ほどの師岡園とは別の農園として、観光協会と所沢市の一覧に掲載されています。
名前が似ていますが、住所も電話番号も異なります。
初めて調べると、同じ農園の別名かと思ってしまいそうです。しかし、公開されている一覧では明確に2つの農園として扱われています。[1][5]
こちらも個別の品種、当日のぶどう狩りの可否、料金については直接確認してください。
ぶどう狩りは食べ放題?料金の仕組みを知っておこう
観光農園と聞くと、時間制の食べ放題を想像する人もいるかもしれません。
しかし、三ヶ島ぶどう組合の観光協会案内には、入園料とぶどうの重量単価が別々に掲載されています。
| 項目 | 観光協会の掲載内容 |
|---|---|
| 入園料(大人) | 200円(試食込み) |
| 入園料(小学生以下) | 100円 |
| ぶどうの料金 | 1kgあたり700〜1,800円 |
| 団体割引 | 50名以上の案内あり |
| 組合全体の駐車場 | 50台分の掲載あり |
出典:所沢市まちづくり観光協会「三ヶ島ぶどう組合」。掲載額であり、2026年の各農園での適用額を保証するものではありません。[1]
たとえば、ぶどうを1kg収穫した場合は、その品種に対応する重量料金がかかる仕組みと読み取れます。
ただし、農園ごとの精算方法や持ち帰り条件、試食の内容は必ず事前に確認してください。
注意:食べ放題とは限りません
観光協会が掲載しているのは「入園料(試食込)」と「1kgあたりの料金」です。自由に何房でも食べられる食べ放題プランがある、という意味ではありません。
収穫したぶどうの扱いや支払い方法、子どもの料金、予約の要否は、利用する農園へ確認しましょう。
料金表を見ていると、ぶどう狩りの楽しみ方も少し変わって見えてきます。
とにかくたくさん食べるというより、自分で房を選び、収穫し、そのぶどうを味わったり持ち帰ったりする体験。
三ヶ島の観光ぶどう園を訪れるなら、そうした楽しみ方を想像しておくとよさそうです。
なぜ「ぶどう狩り」が観光になる?農家と訪問者をつなぐ仕組み

ここまで調べると、三ヶ島のぶどう園には一つの特徴が浮かんできます。
それは、ただぶどうを生産して出荷するだけではなく、訪問者を畑へ迎え入れていることです。
スーパーでぶどうを買うとき、私たちが見るのは収穫された後の房です。
しかし観光農園なら、その房が樹のどこに実っているのかを自分の目で確かめることができます。
巨峰とシャインマスカットでは色も形も違う。品種によって収穫時期も異なる。そして、同じ品種でも房ごとに様子が違います。
いつもは売り場で出会う果物に、畑の中で出会う。
この順番の違いが、ぶどう狩りの楽しさなのでしょう。
三ヶ島の農園は、地域でまとまっている
さらに、三ヶ島には4農園で構成される組合があります。
観光協会が組合として開園期間や料金、交通案内を掲載しているため、訪問者が地域のぶどう園をまとめて知ることができます。[1]
また、所沢市園芸協会は2026年、市内の観光農園で撮影したぶどうなどを対象とするフォトコンテストを企画しました。
市の案内には、三ヶ島の4農園がすべて含まれています。[5]
ぶどうを作り、売る。その先に、畑へ来てもらい、体験してもらうという接点がある。
茶畑のイメージが強い所沢ですが、現在は果物を通じて訪問者とつながる農業もあるのです。
ぶどう園のすぐ近くに「トトロの森」があるのはなぜ?
三ヶ島ぶどう組合の交通案内を読むと、見慣れないようで聞き覚えのある名前が出てきます。
「トトロの森24号地周辺」。
ぶどう園を探していたはずが、トトロの森に行き着きました。
これは偶然の名前合わせではありません。
三ヶ島は、狭山丘陵の自然と人々の暮らしが近い地域です。
所沢市自身も、三ヶ島の魅力として、里山の自然、観光ぶどう園、比良の丘などを巡る散策コースを挙げています。[6]
そして、同じ三ヶ島には「クロスケの家」もあります。
クロスケの家は、狭山丘陵の森を守る活動に取り組む「トトロのふるさと基金」の拠点です。
旧和田家住宅の建物には、かつて養蚕に使われ、その後製茶工場へ転用された建物も残っています。[7]
ここで、最初に見た茶畑の話とつながりました。
この地域には、森だけがあったわけでも、茶畑だけがあったわけでもありません。
養蚕、製茶、そして現在の観光ぶどう園。
それぞれが同じ農家から生まれたと断定できるわけではありませんが、地域全体で見ると、土地を利用して暮らしてきた人々のさまざまな営みが見えてきます。
ぶどう園もまた、狭山丘陵のふもとにある農の風景の一部なのです。
三ヶ島ぶどう狩りの時期・アクセス・予約の注意点

では、実際に三ヶ島のぶどう園を訪れるには、どうすればよいのでしょうか。
まず大切なのが時期です。
ぶどう狩りの基本案内
- 場所:埼玉県所沢市三ヶ島1丁目周辺
- 西武線の起点:西武池袋線・小手指駅
- 例年の主なシーズン:8月上旬〜9月下旬
- 一部農園:埼玉県の掲載では10月中旬までの案内あり
- 主な品種:巨峰、ヒムロット、シャインマスカットなど
- 入園・収穫料金:観光協会掲載額を参照し、当年の金額は農園に確認
- 予約:各農園に事前確認を推奨
2026年10月20日現在、一般的な主シーズンはすでに過ぎています。
埼玉県の荻野園の情報には10月中旬までの開園時期が掲載されていますが、これをもって現在も営業中とは判断できません。
今季の営業終了日や在庫状況については、農園ごとに直接確認が必要です。
小手指駅からはバス利用が基本
所沢市まちづくり観光協会は、小手指駅南口からのバス利用を案内しています。
掲載されているのは、早稲田大学行、金子駅入口行、宮寺西行の各路線です。
「狭山湖口」「大日堂」「芸術総合高校」のいずれかで下車し、徒歩約8分という案内になっています。[1]
ただし、実際に利用する停留所は農園の場所によって異なります。
バス路線の運行状況や時刻表も変更されるため、出発前に確認しましょう。
農園を訪れる前に確認したいこと
観光農園では、その年の天候や生育状況によって収穫できる日が変わります。
特に次の点は、事前に電話で聞いておくと安心です。
- 希望する日にぶどう狩りができるか
- 収穫可能な品種は何か
- 予約が必要か
- 入園料と収穫したぶどうの料金
- 食べ放題か、試食・量り売り方式か
- 子ども連れやベビーカーで利用できるか
- 雨天時の営業と駐車場の利用条件
農園は作物を育てる場所でもあります。指定された場所だけを歩き、収穫する房は農園の案内に従って選びましょう。
よくある質問|三ヶ島のぶどう狩りQ&A
Q. 三ヶ島のぶどう狩りはいつが旬ですか?
観光協会の組合案内では8月上旬〜9月下旬です。農園によっては10月中旬までの掲載もあります。実際の収穫期間は天候や品種で変わるため、訪問直前に確認してください。
Q. シャインマスカットを自分で収穫できますか?
荻野園では、埼玉県の公開情報にシャインマスカットを収穫できる品種として掲載しています。ただし、当日の収穫可否は別途確認が必要です。
Q. ぶどうを買うだけでも利用できますか?
荻野園や中山ぶどう園では直売品種が案内されています。直売のみの利用条件や営業日は、各農園に確認してください。
Q. 食べ放題はありますか?
観光協会の三ヶ島ぶどう組合の案内では、入園料と1kgあたりの重量料金が掲載されています。食べ放題の実施は確認できないため、希望する場合は農園へお問い合わせください。
Q. 車で行けますか?
観光協会には組合全体で50台分の駐車場があると掲載されています。各農園で利用できる台数や駐車位置は確認してください。
Q. 三ヶ島は狭山市ですか?
いいえ、三ヶ島は所沢市です。狭山湖や狭山丘陵に近い地域ですが、所在地は埼玉県所沢市になります。
茶畑の先にあったのは、所沢のもう一つの農業風景

三ヶ島のぶどう園を調べ始めたとき、一番気になったのは「茶畑の街なのに、なぜぶどう?」ということでした。
調べてみると、茶の歴史は本当に深いものでした。
江戸時代から続く狭山茶の生産。かつての養蚕や製茶の建物。そして現在も残る畑と里山。
そこに、4つの観光ぶどう園があります。
黒い土だけで甘さの理由が分かったわけではありません。ぶどう栽培の始まりについても、まだ分からないことがあります。
けれども、確かに分かったことがあります。
三ヶ島は、一つの農産物だけで説明できる場所ではないということです。
茶畑の向こうに、ぶどう棚がある。
そのぶどう棚の近くには、守られてきた森がある。
同じ地域の風景を、少し違う角度から眺めるだけで、所沢の姿が変わって見えてきます。
次に三ヶ島の茶畑を見かけたら、その先にぶどうの房が実る季節があることも、思い出せそうです。
参考資料・出典
本記事は2026年10月20日時点に確認した公開情報をもとに作成しています。農園の料金・開園日・品種・収穫可否は、実際の利用時に変更されている場合があります。
-
所沢市まちづくり観光協会
「三ヶ島ぶどう組合」
https://tokoro-kankou.jp/?page_id=1227
組合加盟農園、開園期間、掲載料金、品種、交通案内、駐車場など。
確認日:2026年10月20日 -
埼玉県
グリーン・ツーリズム情報サイト「荻野園」
https://www.pref.saitama.lg.jp/greentourism/shisetsu/102007.html
栽培品種、収穫体験、営業時間、所在地など。
公開ページ更新日:2026年7月27日
確認日:2026年10月20日 -
埼玉県
グリーン・ツーリズム情報サイト「中山ぶどう園」
https://www.pref.saitama.lg.jp/greentourism/shisetsu/102010.html
収穫可能品種、直売品種、営業時間、所在地など。
公開ページ更新日:2026年7月27日
確認日:2026年10月20日 -
所沢市
「所沢市文化財保存活用地域計画(素案)」
所沢市公開PDF
三ケ島地区における狭山茶の栽培、製茶、輸出と産業の歴史。
確認日:2026年10月20日 -
所沢市・所沢市園芸協会
「ぶどうフォトコンテスト」
https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/kurashi/shigotojyoho/nogyo/shimin/grape.html
2026年の対象観光農園一覧、住所、電話番号。
公開ページ更新日:2026年8月5日
確認日:2026年10月20日 -
所沢市
「三ケ島の魅せどころ(令和7年11月号)」
所沢市公式ページ
三ケ島地区の里山風景、観光ぶどう園、比良の丘などの地域紹介。
確認日:2026年10月20日 -
文化遺産オンライン
「旧和田家住宅(クロスケの家)製茶工場」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/229358
養蚕施設から製茶工場への転用と建物の歴史。
確認日:2026年10月20日 -
所沢市
「写真で見るところざわの移り変わり・三ケ島地区」
所沢市公式ページ
三ケ島の地名と地域の成立、農業を含む地域の歴史。
確認日:2026年10月20日
※三ヶ島のぶどう栽培開始年、組合結成の経緯、地域の黒ボク土と個別農園の糖度の直接的な因果関係については、今回参照した資料からは確認できなかったため断定していません。