
西武多摩川線・是政駅|府中市の産業と歴史
あの「プレモル」が生まれた場所。 それが東京・府中市にあると聞いたら、 ちょっと意外ではありませんか。
ザ・プレミアム・モルツ。 テレビCMやスーパーの売り場でもおなじみの、 サントリーを代表するビールです。
その発祥の地は、大阪でも京都でもなく、 東京都府中市。 西武多摩川線の終点・是政駅からも 歩いて向かえる場所にあります。
そこにあるのが 「サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野」。 サントリー自身が、この工場を 「ザ・プレミアム・モルツ誕生の地」 と紹介しています。 [1]
なるほど、発祥の地は府中だった。 ……でも、ここで一つ引っ掛かります。
どうして、わざわざ府中に ビール工場を造ったのでしょう。 そして、この工場ができてから プレモルの発売までには、 実は40年もの時間が流れています。
その40年間に何があったのか。 工場の歴史をたどると、 一杯のビールの見え方が 少し変わってきます。
サントリー初のビール工場は、 1963年に府中市で開設されました。
その武蔵野ビール工場に 1989年、開発用の小規模醸造設備が設けられ、 2003年にザ・プレミアム・モルツが発売。 この場所は、生産の歴史だけでなく、 商品開発の歴史とも結び付いています。 [2]
最初のビール工場が、なぜ府中に?

サントリーという名前を聞くと、 ウイスキーの山崎蒸溜所や、 大阪とのつながりを思い浮かべる人も 多いかもしれません。
ところが、サントリーが最初に設けた ビール工場は東京の武蔵野でした。
開設は1963年。 サントリーの企業年表でも、 この年に武蔵野ビール工場が 竣工したことが記録されています。 [2]
つまり、この場所は単なる 「現在のビール生産拠点」ではありません。 サントリーのビールづくりが 本格的に始まった、その出発点です。
手掛かりは「水」にあった
では、なぜ武蔵野だったのでしょう。
工場の公式案内で強調されているのが、 この土地の天然水です。
ビールづくりには大量の水を使います。 その水は、麦芽の成分を引き出す仕込みの工程でも 大切な役割を果たします。
サントリーは、天然水を生かした ビールづくりを武蔵野の地で 続けてきたと説明しています。 [1]
ビールの話なのに、最初の手掛かりは水。 麦でもホップでもなく、 まずは足元に目を向けることになりました。
ただし、1963年の工場用地選定について、 天然水だけが決定理由だったと 断定できる資料は今回確認できていません。 物流や用地条件なども含めた 当時の判断の全容とは、区別して考える必要があります。
確かなのは、武蔵野の水が 現在の工場のものづくりを語るうえで、 中心的な存在になっていることです。
1963年に工場が完成。でもプレモル誕生は40年後?

ここで、少し時間を整理してみましょう。
工場が開設されたのは1963年。 ザ・プレミアム・モルツの発売は2003年。
その差は、ちょうど40年。
40年間、プレモルだけを 開発し続けていたのでしょうか。
そう考えると、少し話が大きくなりすぎます。 実際には、この40年間に サントリーのビール事業は 何度も新しい挑戦を重ねていました。
武蔵野ビール工場が竣工。 サントリー初のビール工場として 事業の出発点となる。
瓶詰め生ビール「びん生」を発売。 新しいビール商品の開発が続く。
オールモルトの高品質ビール 「モルツ」を発売。
武蔵野ビール工場に 「ミニブルワリー」を設置。 本格的なビール開発を開始。
「ザ・プレミアム・モルツ」を発売。
モンドセレクションで最高金賞を受賞。 その後、3年連続受賞となる。
サントリーのビール事業が 46年目にして初めて黒字化。
年表出典:サントリー「事業戦略」。 年数は暦年の差に基づく表現です。 [2]
注目したいのは、1989年です。
工場の開設から26年後、 武蔵野ビール工場に 「ミニブルワリー」が設置されました。
ミニブルワリーとは、 小規模なビール醸造設備のこと。 大量生産とは異なり、 開発段階のビールづくりにも利用できます。
それまでの工場は、 ビールを造る場所。 そこに本格的な開発の役割が加わりました。
武蔵野は「造る場所」であると同時に、 「新しいビールを考える場所」にもなったのです。
ここでようやく、 「プレモル誕生の地」という言葉が 具体的な意味を持ち始めます。
プレモルが目指したのは、どんなビールだった?

では、2003年に発売された ザ・プレミアム・モルツは、 何を目指して開発されたのでしょう。
サントリーの研究開発史を調べると、 その方向性がはっきり見えてきます。
目標は、 本場ヨーロッパでも認められる、 最高峰・最高級のピルスナービールを造ること。 [3]
ピルスナーとは、 チェコのピルゼンを起源とする ビールのスタイルです。 明るい色合いで、ホップの香りや苦みを 特徴とするタイプとして知られています。
単に「高価なビールを売ろう」 という話ではありません。 ビールそのものの味や香りを どこまで磨けるか。 そこに開発の狙いがあったのです。
材料は意外なほど少ない
プレモルの基本となる原料は、 麦芽、ホップ、天然水。
いろいろな材料を足して 豪華にするのではなく、 原料の選び方と製法にこだわっています。
サントリーの開発史によれば、 2003年発売時には欧州産アロマホップや 厳選した麦芽を使用。 香りとコクを引き出すために、 複数の醸造技術を採用しました。 [3]
アロマホップとは、 ビールの香りを特徴づけるホップのこと。 ホップというと苦い印象がありますが、 香りも大切な仕事なのです。
「ダブルデコクション」って何?
ここで、少し耳慣れない言葉が登場します。
ダブルデコクション製法。
まるで難しい技術の名前ですが、 仕組みは意外と分かりやすいものです。
ビールの原料となる麦芽を仕込む際に、 一部を煮出して麦芽の旨みを引き出す。 その工程を2回行うのが、 ダブルデコクション製法です。 [1]
同じ材料でも、どう扱うかで 味わいは変わります。
料理にたとえるなら、 素材を選ぶだけでなく、 火の入れ方にもこだわるようなもの。
もっとも、ビールづくりは それだけで完成するわけではありません。
発酵では酵母の状態を管理し、 その後は低温のタンクで熟成させます。 最後は酸素の影響にも気を配りながら 容器に詰めていきます。
原料がシンプルだからこそ、 工程の一つひとつが重要になる。
「プレミアム」という名前の裏側には、 こうした細かな技術の積み重ねがありました。
そんなサントリーが、ビール事業で黒字になるまで46年?

ここまで見ると、 サントリーは昔からビール事業で 順調だったように感じられます。
ところが、もう一つ意外な数字があります。
サントリーのビール事業が 初めて黒字になったのは2008年。
1963年の事業開始から数えて、 46年目のことでした。 [2]
46年。 ビールを造り続けて、 半世紀近くたってからの初黒字です。
ただし、ここで注意したいのは、 プレモル一つだけが 黒字化の理由だったと 決めつけることはできない点です。
サントリーは同時期、 プレミアムビールだけでなく、 2007年発売の「金麦」なども展開し、 ビール関連事業を広げていました。
プレモルの発売、 商品の評価、 そして事業全体の変化。
これらを時系列で並べると、 一つの商品が登場して突然すべてが 変わったというより、 長い挑戦の中で転機が生まれた ことが見えてきます。
40年と46年。二つの数字が語るもの
工場開設からプレモル発売までは40年。 ビール事業の初黒字は46年目。
この二つは別々の出来事ですが、 武蔵野工場の歴史を考えるうえで 大切な手掛かりになります。
「発祥の地」という短い言葉の背後には、 予想以上に長い時間が流れていたのです。
それなのに、なぜ名前は「東京・武蔵野」?
さて、ここで地名にも 小さな引っ掛かりがあります。
工場の現在の名称は、 「サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野」。
でも、住所は東京都府中市矢崎町。 武蔵野市ではありません。 [4]
「武蔵野」と書いてあるのに、 所在地は府中市。
これは地名の取り違えではなく、 「武蔵野」という言葉が 市の名前だけを意味するわけではないことを 知ると理解しやすくなります。
武蔵野は、東京都の西部に広がる 武蔵野台地や、その周辺地域を 指す言葉としても使われます。
そして工場は、開設当時から 「武蔵野ビール工場」という 名称で歴史に登場します。
つまり、現在の工場名の 「武蔵野」を、そのまま 武蔵野市という行政区分に 読み替える必要はありません。
この工場の所在地を ひと言で紹介するなら、 「東京都府中市にある、武蔵野の名を持つビール工場」 が正確です。
そして西武線沿線の読者にとっては、 是政駅から向かえる場所にあることも 見逃せないポイントです。
プレモル誕生の地は、今も見学できる?

ここまで歴史を知ると、 現在の工場がどうなっているのかも 気になります。
答えは、現在も稼働するビール工場で、 一般向けの見学ツアーも実施されています。 [1]
見学ツアーでは、 ビールづくりの工程や 製造へのこだわりを学ぶことができます。
見学後には試飲が用意される プログラムもあります。 もちろん飲酒できるのは20歳以上で、 運転する人には提供されません。
ここで大切なのが、 工場見学は事前予約を基本とする という点です。
工場の建物が見えるからといって、 いつでも製造現場に入れるわけではありません。 ツアーごとに料金や対象年齢、 開催日、予約条件が異なります。 [5]
西武線の是政駅から歩いて行ける?
西武多摩川線の終着駅・是政駅から、 工場までは徒歩で向かうことができます。
経路によりますが、 徒歩約17分が一つの目安です。 ただし、これは地図サービス上の概算で、 サントリーが公式に案内する 徒歩ルートとは異なります。
サントリーの公式アクセス案内では、 JR府中本町駅から徒歩約15分、 分倍河原駅からは無料シャトルバスを案内しています。 [4]
是政駅から行く場合も、 見学者入口の位置を確認してください。 地図アプリで工場名だけを検索すると、 裏門側に案内される場合があると 公式サイトでも注意されています。
サントリー東京・武蔵野工場 基本情報
- 正式名称
- サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野
- 所在地
- 東京都府中市矢崎町3-1
- 最初の工場開設
- 1963年
- 西武線からのアクセス
- 西武多摩川線・是政駅から徒歩約17分目安。 見学者入口までの経路を要確認。
- 公式案内のアクセス
- JR府中本町駅から徒歩約15分。 分倍河原駅から無料シャトルバスあり。
- 施設案内時間
- 9:30〜17:00 (ブルワリーショップ11:00〜16:50)。 特別営業・休業日は公式サイトで確認。
- 見学・参加料金
- 入場料は不要。 見学ツアーはコースによって有料・無料が異なる。 原則事前予約制。
- 問い合わせ
-
042-360-9591
電話受付9:30〜17:00 - 見学予約
- サントリー東京・武蔵野工場 公式サイト
情報確認日:2026年10月30日。 2026年10月1日付の公式案内では、 11月開催分までWEB予約を受け付け、 12月開催分は11月2日9:30から受付開始予定です。 満席・休業・変更の可能性があります。
見学前に確認しておきたいこと
予約: 参加するツアーの予約方法、 空き状況、料金を公式サイトで確認してください。
家族での見学: 20歳未満の方だけでは来場できません。 子どもを含む参加条件は 各プログラムの案内を確認してください。
試飲: 20歳未満の飲酒は禁止されています。 車、バイク、自転車を運転する人も 試飲できません。 ソフトドリンクの用意があります。
交通: 公共交通機関の利用が推奨されています。 無料シャトルバスの運行日や時刻は 事前に確認してください。
あの金色の缶に、府中の40年がつながっていた
ザ・プレミアム・モルツの缶にある、 「プレミアム」という言葉。
それだけを見ると、 少し贅沢なビールという印象で 終わるかもしれません。
けれど、府中市の武蔵野工場の歴史をたどると、 別のものが見えてきます。
1963年に始まったビールづくり。 1989年に加わった開発用の醸造設備。 2003年のプレモル発売。 そして、2008年に迎えたビール事業の初黒字。
そこには、商品を造り、 改良し、新しいものを生み出そうとする 長い時間がありました。
西武多摩川線の是政駅。 多摩川に近いこの終着駅から 歩いて行ける場所に、 そんな歴史を持つ工場があります。
いつもの売り場でプレモルを見かけたとき、 その金色の缶から、 府中にある一つの工場を思い浮かべる。
「誕生の地」とは、 ただ最初に造られた場所の名前ではなく、 積み重ねられてきた挑戦を たどるための手掛かりでもある。
プレモルの発祥を調べてみたら、 見慣れたビールの向こうに、 武蔵野の水と、40年にわたる サントリーの歩みが見えてきました。
参考資料・出典
以下は本文の主な事実関係を確認した資料です。 確認日:2026年10月30日。 工場の利用条件や予約受付状況は 記事公開後に変更される場合があります。
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サントリー
「〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野
ものづくりのこだわり」。
1963年開設、プレモル誕生の地、
原料・製法・見学内容を確認。
https://www.suntory.co.jp/factory/musashino/about/ -
サントリーホールディングス
「採用情報・事業戦略」。
武蔵野ビール工場の竣工、
ミニブルワリーの設置、
プレモル発売およびビール事業の初黒字化を確認。
https://www.suntory.co.jp/recruit/strategies/business/ -
サントリー
「研究開発の歴史」。
2003年のザ・プレミアム・モルツ開発の
目標、原料・製法、受賞歴を確認。
https://www.suntory.co.jp/company/research/history.html -
サントリー
「〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野
アクセス」。
所在地、府中本町駅からの徒歩案内、
無料シャトルバス、来場時の注意事項を確認。
https://www.suntory.co.jp/factory/musashino/access/index.html -
サントリー
「工場見学Q&A」。
事前予約、料金、年齢制限、
飲酒および交通手段に関する注意事項を確認。
https://www.suntory.co.jp/factory/qa/ -
サントリー
「ご予約受付期間のお知らせ」
(2026年10月1日)。
2026年11月・12月開催分の
予約受付スケジュールを確認。
https://www.suntory.co.jp/factory/musashino/news/detail/2024222.html