
武蔵砂川駅|昭和記念公園の入口から、景色を読み解く
同じ公園の、同じ場所へ行くのに、入口から徒歩約38分と約5分。
国営昭和記念公園の「こもれびの里」には、そんな差があります。立川ゲートからは約38分。北側の砂川ゲートからなら約5分です。入口を替えただけで、ずいぶん近くなる。まずはこの数字が、手掛かりです。[1]
西武拝島線の武蔵砂川駅から使いやすいのが、この砂川口。ただし、「必ず並ばずに入れる入口」とは言い切れません。確かに分かる魅力は、こもれびの里を目指すとき、園内を長く横断せずに済むことです。
では、その近道の先にあるのは、どんな場所なのでしょう。花壇や芝生を思い浮かべていたら、今度は田んぼと農家が登場します。公園へ来たつもりが、話の舞台は村へ。入口の選び方には、その続きがありました。
「駅に近い入口」と「行きたい場所に近い入口」は、違う
公園へ行くとき、つい調べるのは「駅から何分?」です。でも昭和記念公園では、もう一つ先まで見たいところ。ゲートに着いてから、目的地まで何分かかるかで、歩く量が変わります。
武蔵砂川駅から砂川ゲートまでは、公式案内で徒歩約20分。そこからこもれびの里まで約5分なので、単純に足すと約25分が目安です。信号待ちや入園手続き、休憩の時間は別に見込んでください。[2][1]
| 入園ゲート | 園内の徒歩時間 |
|---|---|
| 立川ゲート | 約38分 |
| 西立川ゲート | 約33分 |
| 砂川ゲート | 約5分 |
施設公式ページの目安です。駅からゲートまでの時間や、入園待ちは含みません。歩く速さや通行状況でも変わります。[1]
一方、西立川駅から西立川ゲートまでは約2分。駅から公園への近さでは便利でも、こもれびの里はさらに先です。「公園に着いた」と「目的地に着いた」は、別の出来事なのでした。足の出番が、もう一幕あります。[2]
砂川口は、公式に案内されている通常の入口です。「裏口」と呼びたくなるのは、立川側から見ていた公園を、反対側から楽しめるから。秘密の通路というより、目的地に合わせて選ぶ入口と考えると分かりやすくなります。
ただ、地図の上で近い理由が分かると、次はその目的地が気になります。どうして大きな公園の中に、わざわざ農村があるのでしょう。
公園の中の田んぼは、昔の村の生き残り?
こもれびの里は、水田や畑、農家とその周りの林などで、昭和30年代の武蔵野の農村風景と暮らしを再現した場所です。開園は2007年。昔の集落がそのまま取り残されている、というわけではありません。[1]
では、懐かしい景色を眺めるためのセットなのでしょうか。
公式が掲げる目的は、農作業や年中行事の体験を通じて、自然と暮らしの知恵を伝えること。計画の段階から市民が関わり、今も市民参加で整備・運営されています。[1]
つまり、残そうとしているのは家や田畑の形だけではなく、それを使って暮らす知恵でもある。田んぼは、田んぼ役として立っているだけでは済まないのです。
散策するなら、農家だけを探して終わらず、水田や畑との組み合わせも見てみたいところ。食べ物を育てる場所と暮らす場所が一緒に並ぶと、「昔の家」が少し具体的な生活の場に見えてきます。
それなら、あの農家も再現のために新しく建てたのでしょうか。ここで、風景と建物の来歴が分かれます。
昭和の風景なのに、農家は別の町から来ていた
2013年に整備された農家エリアには、主屋、長屋門、内蔵、外蔵の4棟が移築復元されています。移築とは、建物を別の場所へ移して建て直すことです。[1]
主屋・長屋門・内蔵の3棟は東京都狛江市から、外蔵は東京都あきる野市から移されたもの。狛江市から来た3棟は、立川市指定有形文化財になっています。[1]
風景は再現、建物は移築。ひとまとめに「昔のまま」と言うと、この違いを見落としてしまいます。
昭和30年代というのも、建物すべてがその時代に建てられた、という意味ではありません。ここで表しているのは、その時代の農村の風景や暮らしです。
砂川口からすぐ届く場所に、別の町で使われていた建物と、今の人が手を入れる田畑が一緒にある。静かに見える景色の中に、思ったより多くの人の仕事が重なっています。
その目で園内を見ると、隣の雑木林にも疑問が生まれます。こちらこそ、ずっと昔からの自然なのでしょうか。
隣の雑木林まで、人がつくったものだった
砂川ゲートから徒歩約10分の「こもれびの丘」は、人工的な丘に武蔵野の雑木林を復元したエリアです。こもれびの里とは別の場所ですが、こちらも人の手が景色を支えています。[3]
もともと平らだった土地に、米軍基地撤去時のがれきや多摩ニュータウンの工事で出た残土を使って丘を造成。元の表土をいったん取り、盛土の上に土を重ねて戻し、樹木を移植したと公園は説明しています。[3]
木が生えた丘を見て、つい「昔からあったのかな」と考えてしまう。地面の下にまで、工事の履歴がありました。
今もボランティアが下草刈りや落ち葉かきなどを行い、雑木林を管理しています。農村も雑木林も、ただ放っておけば同じ姿で残るわけではない。この二つを続けて見ると、公園の自然と人の仕事を、簡単には切り離せなくなります。[3]
北側を楽しむ日なら、こもれびの里を見て、こもれびの丘へ足を延ばす組み合わせが考えられます。日本庭園も砂川ゲートから徒歩約15分。なお、各時間はゲートを起点にした数字で、施設同士の所要時間ではありません。[4]
行く前は「砂川口」と「農家の開く時間」を確認
こもれびの里を目指すなら、地図の目的地を「昭和記念公園」だけで済ませず、「昭和記念公園 砂川口」まで指定すると、使いたい入口を確認しやすくなります。
そしてもう一つ。公園が開いていても、農家エリアは同じ時間に開いているとは限りません。建物も見たい日は、里へ先に向かう予定が立てやすそうです。
情報確認日:2026年10月17日。特別イベントでは入口や開園時間が通常と異なる場合があります。出発前に公園公式サイトのお知らせをご確認ください。
「裏口」の先には、公園の別の顔があった
立川ゲートから約38分、砂川ゲートから約5分。最初は、歩く時間を短くする話でした。
でも、その5分の先にあるのは、市民が関わりながら保つ田畑と、別の町から移された農家。さらに歩けば、人が造成し、手入れを続ける雑木林があります。
砂川口は、誰も並ばないことを約束する秘密の扉ではありません。農村の暮らしから公園を見始められる入口です。
次に地図で砂川口を見つけたら、端にある小さな入口という印象も変わりそうです。今日見たい景色が里の暮らしなら、そこが散歩の出発点になります。
入口の次は、水の通り道も気になったら
景色の下にある仕組みをもう少し追うなら、同じ武蔵砂川の水路へ。公園の過ごし方を変える別の入口の話もあります。