
屋根がある。タイヤは3つ。しかも3人乗れる。
まるで東南アジアの街を走る「トゥクトゥク」のような乗り物が、埼玉県秩父市でレンタルできるようになりました。
その名も「ビベルトライク」。
ガソリンではなく電気で走る小さな三輪車です。2026年8月3日にオープンしたレンタル拠点「MoBee(モビー)」で、観光客向けに貸し出されています。
先に知っておきたい情報
料金は1台1時間2,000円、1日10,000円。充電費と保険料込み。運転には普通自動車免許(AT限定可)が必要で、電話またはInstagramのDMから予約できます。[1]
でも、ここで一つ疑問が浮かびます。
秩父には電車もバスもあります。普通のレンタカーだってあります。
なぜ、わざわざ三輪のトゥクトゥクを観光用に導入したのでしょうか。
調べていくと、ちょっと変わった見た目の奥に、秩父ならではの移動の課題と、「観光の楽しみ方そのものを変える」という狙いが見えてきました。
情報最終確認日:2026年10月24日/メーカー発表・公開資料をもとに構成
なぜ秩父に、トゥクトゥクが必要だったのか?

秩父観光の魅力は、一か所だけでは終わらないことです。
歴史ある秩父神社を訪ねたり、昔ながらの食堂に入ったり、少し離れた自然の景色を見に行ったり。
目的地を一つ決めても、その途中で気になる場所が次々に見つかります。
ただし、ここに秩父観光ならではの難しさがあります。
観光スポットが広い範囲に点在していることです。
駅から歩いて巡れる場所もあれば、公共交通機関だけではアクセスしづらい場所もあります。
電車やバスの時刻に合わせる旅行では、立ち寄る場所を減らさなければならないこともあるでしょう。
今回の導入を発表した株式会社バブルも、こうした観光地の移動手段の不足を背景として挙げています。[1]
そこで登場するのが、ビベルトライクです。
決まった路線や時刻表に縛られず、自分たちのペースで移動できる。
いわゆる「二次交通」の新しい選択肢です。
二次交通とは、電車などで観光地の玄関口に到着したあと、そこから実際の目的地まで移動する手段のこと。
つまり、電車を置き換える乗り物というより、電車で秩父に着いたあとの旅を広げる乗り物なのです。
なるほど。移動の不便を補うための導入だったわけです。
しかし、それだけなら普通の自動車でもよさそうです。
では、なぜ三輪なのでしょうか。
なぜタイヤが3つ?バイクに見えるのに普通免許で運転できる理由

ビベルトライクを見て最初に気になるのは、やはりその形です。
四輪の自動車でもなく、二輪のバイクでもない。
タイヤは3つ。
この三輪構造が、ビベルトライクの大きな特徴です。
車体がバイクのように大きく傾く構造ではないため、メーカーは、二輪車の運転経験がない人でも扱いやすい点を特徴として紹介しています。[1]
そして、もう一つ意外なのが免許です。
バイクのような見た目なのに、普通自動車免許で運転できます。
AT限定免許でも大丈夫です。
これは「トライク」と呼ばれる三輪車の仕組みが関係しています。
トライクは車両の構造に応じて法律上の分類が異なりますが、ビベルトライクのような車両は、道路交通法上は普通自動車として扱われます。
JAFも、一般的なトライクについて、普通自動車免許で運転する乗り物だと説明しています。[3]
見た目はバイクに近い
三輪でコンパクト。ドアのない開放的な車体が特徴です。
運転免許は自動車
普通自動車免許(AT限定可)で運転できます。原付免許だけでは運転できません。
まさか、バイクのような乗り物なのに、必要なのはクルマの免許。
しかも乗車定員は3人です。
友人同士でも、少人数の家族でも、一台で出かけられます。
ただし、三輪だから絶対に転倒しないというわけではありません。カーブや坂道、段差、路面状況には十分な注意が必要です。
そして、ここまで分かると次の疑問が出てきます。
便利に移動したいだけなら、小さな四輪EVでもよいはずです。
それでも、この乗り物が観光地で選ばれる理由は何でしょうか。
ドアがないのは不便?実はそこが観光の面白さだった

ビベルトライクには屋根があります。
ところが、一般的な乗用車のような密閉された車内ではありません。
側面が開放された、オープンな構造です。
普通の自動車と比べれば、雨や風、寒さへの対策が必要になります。
それでもメーカーは、この開放感を観光用途での強みとして紹介しています。[1]
考えてみると、これはなかなか面白い発想です。
一般的なレンタカーなら、車内から窓越しに景色を眺めます。
一方、ビベルトライクでは、風や周囲の空気を直接感じながら走ることになります。
移動中の景色だけではなく、移動している時間そのものが体験になる。
目的地に到着するまでの時間も、観光の一部にしてしまう。
これが、普通のレンタカーとの大きな違いです。
さらに、モーターで走るため、走行中にガソリンを燃やして排気ガスを出すこともありません。
静音性も、メーカーが挙げる特徴の一つです。ただし、EVだから環境負荷が完全にゼロという意味ではなく、充電用の電力の製造や車両の生産には別の環境負荷があります。
静かな街並みや自然の多い秩父で、小さな電動車両を活用する。
ここまで来ると、最初の「ちょっと変わった三輪車」という印象が変わってきます。
ただの移動手段ではなく、街の見え方を変えるための乗り物というわけです。
累計300台突破の「人気EV」。実は300台の意味にも注目
今回のニュースで、もう一つ目を引く数字があります。
300台。
自動車の販売台数として考えると、ものすごく大きな数字には見えないかもしれません。
しかし、ここで注目したいのは、何に使うための乗り物として販売されてきたのか、という点です。
メーカーの発表によると、当初から想定されていた用途には、日常の買い物や通院などがあります。
さらに、施設内の移動や事業用途など、法人による導入も広がっています。[2]
つまり、ビベルトライクは観光のためだけに生まれた乗り物ではありません。
日常の短い移動を支えるコンパクトな車両として展開され、その特徴が観光地でのレンタルにも活用されるようになったのです。
なお、300台という数字は、ビベルトライク単独ではなく、COCOシリーズやビベルトラックなどを含むシリーズ全体の数字です。
受注・出荷実績を含む累計ベースの概算値であり、300台すべてが一般消費者へ納車済みという意味ではありません。
この数字だけで国内最大級や市場シェア首位といった評価はできませんが、個人利用から事業利用まで、導入先が広がっていることは分かります。
そして、その新しい利用先の一つが秩父だったというわけです。
秩父ではどこで借りられる?料金は1時間2,000円から

それでは、実際に秩父で乗る場合はどうすればよいのでしょうか。
レンタル拠点は、2026年8月3日にオープンした「MoBee(モビー)」。
所在地は秩父市東町25-2、峰岸ビル1階です。
導入された車両は4台。内訳は、ビベルトライク2台、ビベルCOCO2台となっています。[1]
料金は人数ごとではなく、車両1台あたりです。
例えば3人で1時間乗った場合、車両料金を均等に割れば1人あたり約667円。
3時間なら1台6,000円、3人で割れば1人2,000円です。
もちろん、3人乗らなければいけないわけではありません。
また、時間料金は1時間ごと2,000円なので、5時間分で1万円となります。ただし、5時間利用と1日利用では返却条件や利用できる時間帯が同じとは限らないため、予約時に確認してください。
充電費と保険料は料金に含まれています。保険の補償範囲や免責条件は、利用前に店舗へ確認しておきましょう。
予約は電話かInstagramのDM
メーカー発表で案内されている予約方法は、電話またはInstagramのダイレクトメッセージです。
| サービス名 | MoBee(モビー) |
|---|---|
| 住所 | 埼玉県秩父市東町25-2 峰岸ビル1F |
| 開業日 | 2026年8月3日 |
| レンタル車両 | ビベルトライク 2台 ビベルCOCO 2台 |
| 料金 | 1時間2,000円/1日10,000円(1台あたり) |
| 料金に含むもの | 充電費・保険料 |
| 必要な免許 | 普通自動車免許(AT限定可) |
| 電話 | 0494-26-6945 |
| 予約方法 | 電話・Instagram DM |
| 最寄り駅の目安 | 秩父鉄道・御花畑駅周辺/西武秩父駅からも徒歩で向かえるエリア |
料金・導入台数・連絡先は2026年8月19日のメーカー発表に基づきます。最新の空き状況、営業時間、休業日、雨天時の対応は予約時に直接確認してください。
3人で乗れるけれど、子ども連れでも大丈夫?
3人乗りと聞くと、家族で利用したくなる人もいるでしょう。
ただし、ここは少し慎重に考えたいところです。
乗車定員が3人だからといって、年齢を問わず誰でも乗れると決まっているわけではありません。
子どもの乗車条件、座席の設備、チャイルドシート等の取り扱いについては、MoBeeが公開した導入案内だけでは詳細を確認できませんでした。
特に、小さな子どもと利用する場合は、予約前に店舗へ確認することをおすすめします。
乗車前に確認したいこと
普通自動車免許が必要です。免許証の携帯に加え、運転前にはブレーキやアクセルの操作、カーブでの挙動、乗車人数、雨天時の対応、保険の補償条件、走行可能エリアを確認しましょう。
ヘルメットについては、一般的な普通自動車扱いのトライクでは法律上の着用義務がない場合がありますが、JAFは安全のため着用を推奨しています。[3]
また、EVの航続距離は車種・バッテリー・坂道・気温・乗車人数などによって変わります。
秩父には山間部へ向かうルートもありますが、観光地ならどこへでも行けるとは限りません。
長距離の移動を考えている場合は、レンタル車両の充電残量、走行可能距離、利用可能道路を確認してから出発しましょう。
どこを巡ると面白い?電車では見逃しがちな秩父の寄り道
ビベルトライクの面白さが分かったところで、どんな観光に使うとよさそうでしょうか。
まず考えたいのは、秩父の街なかです。
秩父神社や番場通りの周辺には、歴史ある建物や飲食店が集まっています。
例えば、1927年に建てられた「パリー食堂」。国の登録有形文化財でありながら、現在も食事ができるお店です。
ただし、秩父の中心市街地は徒歩でも巡りやすい場所。狭い道や歩行者の多い区間では、車両を使わず歩いた方がよい場合もあります。
そんなときは、少し離れた場所への移動を電動トライクで補い、到着したら歩いて街を楽しむ。
この組み合わせが現実的でしょう。
また、秩父にはアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の舞台として知られるスポットも点在しています。
定林寺や旧秩父橋、羊山公園などを巡る際、移動手段の選択肢が増えるのは魅力です。
ただし、これらは観光先の例であり、MoBeeが公式に設定した走行コースではありません。各施設の駐車条件や利用可能エリアを事前に確認してください。
乗ること自体を楽しむ時間と、降りて街を見る時間。
その二つを組み合わせると、単なる乗り物体験で終わらない旅になりそうです。
三輪の小さなEVが、秩父観光を少し変えるかもしれない
最初に登場した、屋根付きの三輪車を思い出してみてください。
タイヤは3つ。ドアはなく、3人まで乗れる。
最初は、ちょっと珍しい観光用の乗り物に見えたかもしれません。
ところが調べていくと、その形には理由がありました。
普通免許で扱える三輪構造。
景色だけでなく風も感じる開放的な車体。
公共交通機関だけでは巡りにくい場所を、自分たちのペースで移動するための仕組み。
そして、もともとは日常の買い物や通院にも使われてきた小型EVが、観光という新しい場面で活用されていること。
つまり、ビベルトライクは、ただ「珍しい乗り物だから」秩父にやってきたわけではありません。
移動の不便を補いながら、移動そのものも楽しめる。
その両方を狙った乗り物だったのです。
車体の小ささは、旅の楽しさの小ささを意味しません。
電車で秩父に到着したあと、もう少しだけ先へ行ってみる。
その「もう少し」を面白くしてくれるのが、ビベルトライクなのかもしれません。
参考資料・出典
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株式会社バブル「ビベルトライク 埼玉県秩父市でレンタル車両として採用・提供開始」
2026年8月19日発表。MoBeeの開業日、所在地、料金、導入台数、予約方法、車両の特徴、観光利用の背景。
メーカー発表資料を確認
確認日:2026年10月24日 -
株式会社バブル「電動トライク『ビベルトライク』シリーズ 累計販売300台突破」
2026年2月5日発表。シリーズ累計販売実績、販売開始時期、日常利用・事業利用への展開。
メーカー発表資料を確認
確認日:2026年10月24日 -
JAF「いろいろなモビリティ」
トライクの一般的な車両区分、運転免許、安全上の注意、ヘルメットに関する解説。
JAFの解説を確認
確認日:2026年10月24日 -
VIVEL(ビベル)公式サイト/株式会社バブル
車両シリーズおよびメーカー情報。
VIVEL公式サイト
確認日:2026年10月24日 -
ekirip「西武秩父駅・御花畑駅・秩父駅の違いと観光地別の最寄駅」
秩父の鉄道駅の位置関係、街歩きや観光施設へのアクセス。
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確認日:2026年10月24日
※本記事はメーカーの公開発表および公表資料をもとに編集しています。ekirip編集部による実車試乗や現地取材を実施したことを示すものではありません。料金・貸出条件・車両台数・営業状況は変更される可能性があります。利用前にはMoBeeへ最新情報をご確認ください。
