
飯能の新しいまち歩きマップ「ぶらって飯能」が完成。立教大学の学生12人が約1年半かけて見つけたのは、名所だけではない「座って感じる飯能時間」でした。
飯能の観光マップを作る。
そう聞けば、天覧山、飯能河原、ムーミンバレーパークなど、街を代表する観光スポットが思い浮かびます。
ところが、2026年10月23日に完成が報じられた新しいまち歩きマップ「ぶらって飯能」には、少し変わった視点がありました。
注目したのは、飯能にある「座って一息つける場所」。
観光マップなのに、座る場所?
普通は「どこへ行くか」を教えてくれるものなのに、今回は「どこで立ち止まるか」が大切な手掛かりになっているようです。
しかも、このマップを制作したのは旅行会社でも飯能市の観光担当部署でもなく、立教大学の学生たち。そして協力したのは、地元の武蔵野銀行でした。
なぜ、大学と銀行が一緒に観光マップを作ったのでしょうか。そして学生たちは、飯能で何を見つけたのでしょう。
観光マップなのに、なぜ「座る場所」に注目した?
まず、今回のニュースの核心から見てみましょう。
2026年10月23日、飯能市役所で新しいまち歩きマップ「ぶらって飯能」の完成披露・贈呈式が行われました。
テレ玉の報道によると、制作したのは立教大学観光学部の学生12人。約1年半をかけて取り組み、2万冊が制作されたといいます。[1]
そして、学生たちが選んだテーマがこちらです。

テレ玉によれば、学生たちは飯能市内に、立ち止まって座り、一息つける場所が多いことに着目しました。[1]
これが、なかなか面白い着眼点です。
旅行の計画では、目的地をいくつ回れるか、移動時間をどれほど短縮できるか、といったことを考えがちです。
ところが「座る」という行為を中心に置くと、観光の目的が少し変わります。
目的地に着くことだけでなく、そこで過ごす時間も大切になるからです。
例えば、川を眺めながら腰を下ろしたとき、歩いているだけでは見過ごしてしまう景色に気づくかもしれません。
早く次の場所へ行くのではなく、その場所にしばらくいる。
観光のペースを落とすこと自体が、飯能を楽しむ方法になるわけです。
立教大学は「ぶらって飯能」のテーマを「飯能時間」と説明しています。豊かな自然、都市機能、人々の住まいが共存する飯能の魅力を伝えるものです。テレ玉の報道では、さらに「座って感じる」という具体的な視点が紹介されました。[2]
ただし、ここで一つ気になることがあります。
自然の中でゆっくりするなら、飯能に限らず、ほかの観光地でもできそうです。
では、なぜ学生たちは飯能で、このテーマを選んだのでしょうか。
飯能には、街と自然の「ちょうど中間」がある

答えの手掛かりは、立教大学が発表した飯能の特徴にあります。
大学の発表では、飯能の魅力として次の3つが挙げられています。
立教大学は、この3つが共存する街の魅力を伝えることを制作の狙いとしています。[2]
ここに「飯能時間」を理解するヒントがありそうです。
飯能駅の周辺には、商店街や住宅地が広がっています。その一方で、市街地から歩いて飯能河原へ行くことができ、天覧山も比較的身近にあります。
駅前で買い物をして、街を歩き、やがて川や山の景色に出会う。
普段の暮らしと自然が、別々の世界として切り離されていない。
これが飯能の街歩きの特徴の一つといえるでしょう。
遠くの観光名所へ移動することだけが旅ではありません。駅と河原の間にある店、道、建物、そして休める場所にも、街の表情が現れます。
もちろん、今回のマップが具体的にどのベンチや休憩場所を掲載しているかについては、確認した報道・公式発表だけでは網羅的に特定できません。
ただ、学生たちが注目したのが単なる名所の数ではなく、飯能の中でどんな時間を過ごせるかという点だったことは分かります。
なるほど。観光地の地図というより、街との付き合い方を提案する地図なのかもしれません。
そう考えると、次の疑問が出てきます。
そんなマップを、なぜ大学と銀行が共同で作っているのでしょうか。
なぜ立教大学と武蔵野銀行が、飯能の地図を作ったのか?

大学が地域を研究するのは分かります。
でも、銀行がまち歩きマップを制作するというのは、少し意外です。
実は、この取り組みは今回突然始まったものではありません。
立教大学と武蔵野銀行は、2007年7月に産学連携協定を結んでいます。[2]
産学連携とは、大学と企業が互いの知識や強みを持ち寄り、研究や地域の課題解決などに取り組むことです。
両者が協定を結んだ目的は、埼玉県の地域活性化への貢献でした。
その具体的な活動として始まったのが「ぶらって埼玉プロジェクト」です。
観光を通じて地域を元気にする。そのために、街を歩く楽しさや、その土地ならではの魅力を紹介するマップを制作してきました。
銀行が作っているのは、お金の地図ではなく、街の魅力を発見する地図。
少し意外ですが、地域で事業を営む人や、そこで暮らす人を支えるという金融機関の役割を考えると、地域の魅力を発信する活動とも接点が見えてきます。
ただし、これは地域金融機関の役割から考えた編集部の読み解きです。今回の個別事業について、銀行側の具体的な費用負担や経済効果まで確認できたわけではありません。
大学側には学生の視点と観光分野の専門知識があり、銀行側には地域と関わる事業基盤があります。
立教大学と武蔵野銀行が協力してきた背景を知ると、今回の飯能版も、一日限りの観光企画ではなく、長く続いてきた地域連携の一つだと分かります。
では、その活動はこれまで、どんな街を取り上げてきたのでしょう。
実は12作目。飯能の前には、どの街が登場した?

「ぶらって飯能」がシリーズ12作目だと聞くと、飯能周辺で11冊の地図が作られてきたようにも思えます。
ところが、シリーズが取り上げてきた場所は、埼玉県内のさまざまな街に広がっていました。
立教大学の発表には、過去の制作例として、次のような地域が挙げられています。
- 2008年度
- ぶらって幸手
- 2009年度
- ぶらって羽生
- 2010年度
- ぶらって行田
- 2011年度
- ぶらって加須
- 2013年初版
- ぶらって氷川参道(後に改訂版・多言語版も制作)
- 2018年度
- ぶらって新座
- 2019年度
- ぶらって小鹿野
- 2020年度
- ぶらって秩父
- 2021年度
- ぶらって川越
- 2022年度
- ぶらって草加
- 2024年度
- ぶらって朝霞
- 2026年度
- ぶらって飯能
出典:立教大学の2026年10月15日付発表。[2]
川越や秩父のような観光地もあれば、朝霞や新座のように住宅地や日常の街並みが広がる地域もあります。
そして氷川参道のように、街全体ではなく特定の場所に焦点を当てた地図もあります。
一口に「まち歩き」といっても、対象は実にさまざまです。
ちなみに、立教大学は飯能版を「まち歩きマップとして12作目」としていますが、「ぶらって」シリーズ全体では13作目と説明しています。
この違いは、2014年度に制作された「ぶらって笑顔新聞」を数えるかどうかです。こちらは地図ではなく、埼玉県をリードする「人」に着目した制作物でした。[2]
地図のシリーズなのに、新聞まである。
それほど、地域の魅力を伝える方法を広く考えてきたプロジェクトなのですね。
こうして過去の作品を見ると、今回の「座って感じる飯能時間」というテーマも理解しやすくなります。
大切なのは、名所をたくさん並べることだけではない。その街をどう見るか、という視点そのものなのでしょう。
学生12人が約1年半。なぜ、そこまで時間をかけた?
ここで、もう一度制作期間に注目してみます。
テレ玉が報じた制作期間は、およそ1年半。
関わったのは、立教大学観光学部の学生12人です。立教大学の公式発表では、川井千敬助教と観光学部の有志学生が担当したことも明らかになっています。[1][2]
12人で1年半。
単におすすめスポットの名前を集めるだけだと考えると、ずいぶん長い期間です。
ただし、学生たちが具体的に何回現地調査を行い、どのように取材や編集を進めたかという詳しい工程は、確認できた資料だけでは分かりません。
そのため、現地で何百カ所も歩いた、地元住民に何度も聞き取りをした、といった制作過程を事実として語ることはできません。
それでも、1年半をかけて完成したこと自体は確かです。
そして今回のテーマを考えると、制作の成果は掲載地点の数だけでは測れないように思えます。
例えば同じ飯能河原でも、「川がある」と案内するのと、「ここでどんな時間を過ごせるか」を考えるのとでは、街の紹介の仕方が変わります。
一つひとつの場所の価値を、名所としての知名度だけではなく、そこにいる時間から考えてみる。
これは「飯能時間」というテーマから読み取れる、今回のマップの面白さです。
そして、そんな地図が2万冊も作られました。
さて、完成したマップはどこで手に入るのでしょうか。
「ぶらって飯能」はどこでもらえる?無料で入手できる?

テレ玉の2026年10月23日付ニュースでは、「ぶらって飯能」が2万冊制作され、飯能市役所や武蔵野銀行の支店などで配布されると紹介されています。[1]
ただし、10月24日時点で確認した資料からは、すべての配布先店舗の一覧、配布開始の細かな時刻、無料配布かどうか、電子版の公開URLまでは確定できませんでした。
そのため、入手を目的に出かける場合は、配布先で取り扱い状況を確認するのが確実です。
- 名称
- まち歩きマップ「ぶらって飯能」
- テーマ
- 飯能時間/座って感じる「飯能時間」
- 制作
- 立教大学観光学部の学生12人(川井千敬助教らが担当)
- 連携先
- 武蔵野銀行
- 制作期間
- 約1年半(テレ玉報道)
- 発行部数
- 2万冊(テレ玉報道)
- 贈呈日
- 2026年10月23日(金)
- 配布予定先
- 飯能市役所、武蔵野銀行の支店など
- 最寄駅
- 飯能駅(西武池袋線)、東飯能駅(西武池袋線・JR八高線)
- 電子版・料金
- 2026年10月24日時点の確認資料では詳細未確認
贈呈式は飯能市役所本庁舎別館で行われました。会場の住所は埼玉県飯能市大字双柳1-1です。[2]
なお、10月23日の式典はすでに終了しています。市役所の式典会場が、そのまま常設の配布窓口という意味ではありません。
マップを探す場合は、配布場所を確認してから向かいましょう。
地図を手に入れる前でも、「飯能時間」は試せる?
新しいマップの詳しい掲載地点は、実物を見て確かめたいところです。
一方で、学生たちが示した「座って感じる」という視点なら、普段の飯能散歩にも取り入れられます。
例えば、飯能駅や東飯能駅を起点に市街地を歩き、飯能河原や天覧山方面へ向かうコースです。
街を歩く|飯能銀座商店街
駅周辺の商店街には、店舗や古い建物、住宅地につながる道があります。
観光地へ向かう通り道として足早に抜けるのではなく、建物や店先の違いに目を向けてみる。
それだけでも、街の見え方は少し変わります。
川の景色を見る|飯能河原
飯能河原は、駅周辺の市街地から徒歩でアクセスできる水辺です。
川や橋を眺め、季節ごとの景色を楽しめます。
今回のマップの具体的な掲載地点と確認できたわけではありませんが、「目的地で過ごす時間を大切にする」という歩き方を試すには、分かりやすい場所でしょう。
ただし、増水時や悪天候時には川へ近づかず、現地の立入規制や安全案内を優先してください。
街の背景を知る|飯能市立博物館「きっとす」
景色を眺めているうちに、「この街はなぜ、こんな姿になったのだろう」と気になったら、飯能市立博物館も選択肢になります。
飯能の自然や歴史、西川材など、街の背景を知るための展示があります。
見た景色の理由を知ってから、もう一度歩いてみる。
同じ街でも、案外違ったものが目に入るかもしれません。
ここで紹介した3つの場所は、既存の飯能散策情報をもとにしたエキリプ独自の街歩き提案です。「ぶらって飯能」の掲載スポットや公式モデルコースとして紹介しているものではありません。
店舗への立ち寄りや休憩は、営業状況・私有地への立ち入り・周囲の通行に配慮して楽しみましょう。
なぜ今、飯能に「立ち止まる地図」が生まれたのか
今回の取り組みを振り返ると、いくつかの数字が印象に残ります。
2007年に始まった大学と銀行の連携。12人の学生。約1年半の制作期間。そして、2万冊のマップ。
けれど、数字以上に心に残るのは、観光地の紹介で「座ること」に注目した点です。
観光マップには、つい効率を期待してしまいます。
短時間でたくさん回りたい。見落としなく楽しみたい。せっかく行くなら、全部見ておきたい。
そんな気持ちは自然なものです。
しかし、今回の「ぶらって飯能」は、少し違う方向から街を見せようとしています。
何カ所回ったかではなく、その場所でどんな時間を過ごしたか。
それも、観光の大切な楽しさなのだと思います。
立教大学が挙げる「自然」「都市機能」「人々の住まい」の共存。テレ玉が紹介した、座って一息つける場所への着目。
この2つを合わせると、学生たちが伝えようとした飯能の魅力が、少し見えてきます。
冒頭では、観光マップが「座る場所」に注目することを不思議に感じました。
でも今なら、その視点が少し違って見えます。
座るというのは、単なる休憩ではありません。
急いで通り過ぎていた街に、もう少し長く目を向けるための時間でもあるのです。
「ぶらって飯能」という名前を見かけたら、掲載された名所だけでなく、その地図が教えてくれる時間の過ごし方にも注目してみたいところです。
次に飯能へ行ったら、目的地を一つ減らして、腰を下ろす時間を一つ増やしてみる。
それもまた、「飯能時間」の楽しみ方かもしれません。
もう少し飯能を歩いてみたくなったら
「ぶらって飯能」のテーマを知ると、今度は実際の街並みや川、山の景色が気になってきます。
エキリプでは、飯能駅・東飯能駅周辺を歩くための記事も公開しています。次の休日の寄り道を考えるなら、こちらも参考にしてみてください。
参考資料・出典
- テレ玉「まち歩きMAP『ぶらって飯能』を贈呈」 テレビ埼玉/2026年10月23日配信(18時06分) テレ玉ニュース(公式) 学生12人、制作期間約1年半、テーマ、2万冊の制作、配布場所などを確認。ニュース一覧は掲載期間に制限があります。
- 立教大学「立教大学・武蔵野銀行 産学連携プロジェクト まち歩きマップ『ぶらって飯能』完成披露・贈呈式」 立教大学/2026年10月15日発表 立教大学公式発表 プロジェクトの目的、2007年の産学連携協定、歴代マップ、制作担当、贈呈式などを確認。出席者変更の追記も掲載されています。
- 武蔵野銀行「まち歩きマップ『ぶらって飯能』贈呈式の開催について」 武蔵野銀行/2026年10月15日付ニュースリリース 武蔵野銀行ニュースリリース一覧 銀行側による発表の掲載を確認。
- エキリプ「東飯能駅の観光・街歩きガイド」 エキリプ編集部/2026年7月21日更新 記事を確認する 駅周辺の街歩きスポットや散策の背景を参照。
情報確認日:2026年10月24日。マップの配布状況、掲載地点、電子版の有無などは今後変わる可能性があります。最新の案内は発行・配布関係者の公式情報をご確認ください。