
大泉学園駅|アニメの仕事と学び
アニメを描く学校なのに、授業料は0円。それどころか、月額15万円の奨励金まである。
西武池袋線・大泉学園駅の近くに、そんな少し意外な学びの場があります。
名前は「東映アニメーション作画アカデミー」。
『ONE PIECE』『ドラゴンボール』『プリキュア』など、数々の作品を手がけてきた東映アニメーション。
その会社が、未来のアニメーターを育てるために開いている養成プログラムです。
でも、ちょっと待ってください。
普通、専門的な技術を習う学校では授業料を払います。それなのに、ここでは受講する人へお金が支給されるというのです。
なぜ、そこまでするのでしょう。
調べてみると、アニメ制作会社が「絵を教える」だけではなく、「次の作り手を育て、仕事につなぐ」ために設けた仕組みが見えてきました。
東映アニメーション作画アカデミーは、2023年度に始まった1年間の実践型アニメーター養成プログラムです。
受講料は無料。条件付きで月額15万円の奨励金が支給されます。修了後の審査に合格した人は、東映アニメーションの有期契約社員として採用される仕組みです。[1]
つまり、誰でも気軽に参加できるお絵描き教室ではなく、プロの仕事を目指すための選抜制の育成プログラムなのです。
情報確認日:2026年11月1日|最寄駅:西武池袋線「大泉学園駅」
なぜ授業料0円で、月15万円までもらえる?

このアカデミーで最初に目を引くのは、やはりお金の仕組みです。
受講料が無料というだけでも珍しく感じますが、さらに月額15万円の奨励金。
1年間すべての月に支給されたと仮定すると、単純計算で180万円になります。
もちろん、奨励金の支給には条件があり、全員への無条件の支給を約束するものではありません。税金が発生する可能性も公式に案内されています。[1]
それでも、なぜ制作会社がお金をかけてまで人を育てるのでしょうか。
理由を読み解く手掛かりは、アカデミーが掲げる育成方針にあります。
それは「実践性」「即戦力」「仕事としての認識」。
単純に絵が上手になることだけを目標にしていません。実際のアニメ制作現場で必要とされる技術や考え方を身につけることが目的です。
そして、1年間の講義と演習を終えたあと、審査に合格した人には契約社員アニメーターとして入社する道が用意されています。
ここで、最初の印象が変わります。
受講料0円は、無料の趣味講座だからではありません。未来の制作スタッフを育てるための仕組みなのです。
学ぶ側にとっては、技術の習得に集中しやすくなる利点があります。制作会社にとっては、自社の仕事に必要な技術を持つ人材を育てることにつながります。
両者の目的が、一つの教室で重なっているわけです。
ただし、アカデミーの募集そのものは採用求人ではなく、入所すれば必ず就職できるわけでもありません。この違いは、応募を考えるうえで大切です。
絵を描く学校なのに、なぜ「原画」と「動画」に分かれる?

では、その1年間で何を学ぶのでしょうか。
ここに、アニメ制作ならではの面白い仕組みがあります。
作画アカデミーには「原画コース」と「動画コース」が設けられています。
どちらも絵を描く仕事なのに、どうして別々なのでしょう。
その理由は、アニメが動いて見える仕組みにあります。
キャラクターの芝居や動きの要点となる絵を描き、場面の構図や動きの設計を学ぶ。
原画と原画の間をつなぐ絵を描き、キャラクターの動きを滑らかに表現する技術を学ぶ。
たとえば、キャラクターが手を振る場面を考えてみましょう。
手を下げている姿と、上げた姿。
その動きの重要なポイントを設計するのが原画の役割です。
そして、その間に必要な動きを描くことで、手が自然に上がって見えるようにするのが動画の役割です。
もちろん、実際の制作では演出、タイミング、作画設計など、さらに多くの技術が組み合わさります。[2]
なるほど。アニメの「動画」は、完成した映像ファイルを編集するという意味ではないのですね。
制作工程でいう動画は、動きをつなぐ絵を描く専門的な仕事なのです。
東映アニメーションは、この二つを異なる専門技術として位置づけています。そのため、アカデミーでもコースごとに特化した指導が行われます。
なお、応募時に選んだコースは途中で変更できません。
最初から、自分がどのような作画の仕事を目指すのか考える必要があります。[1]
教えるのは、あの名作を描いてきた人たち?
ここまで分かると、次に気になるのは先生です。
アニメーションの専門技術は、いったい誰から習うのでしょうか。
公式サイトの講師紹介には、アニメファンなら見覚えのある作品名が並んでいます。
たとえば、作画アカデミー所長の井手武生さん。
1981年に東映動画の第1期研修生として入社し、『ドラゴンボール』で初めて原画を担当。その後、『ドラゴンボールZ』や『ONE PIECE』などで作画監督を務めてきた人物です。
『ドラゴンボール超』では総作画監督も担当しています。[1]
1981年に研修生だった人が、今度は次の世代を育てている。
これは、少し面白い時間のつながりです。
ほかにも、原画コースでは『HUNTER×HUNTER』などに関わってきた神志那弘志さん、映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』などで作画監督を務めた太田晃博さんらが講師陣として紹介されています。
動画コースには、『ONE PIECE FILM RED』や『プリキュアオールスターズF』で動画監修・動画検査を担当した三木宣人さんが紹介されています。[1]
ただ作品の名前を知っている先生、というわけではありません。
実際の制作工程を経験してきた人たちです。
公式に掲載された修了生の声でも、講師からその場で修正を受けられることや、実際に線を引く様子を見られることが学びになったと紹介されています。
自分の描いた線を、現場経験のある人がどう直すのか。
完成したアニメを見ているだけでは気づきにくい、作り手側の視点を学べることが、このプログラムの特徴です。
※講師は作品制作などの事情によって変更される場合があります。
好きなキャラクターを描ければ入れる?選考は意外と本格的

それほど実践的な内容なら、応募するには何が必要なのでしょうか。
好きなアニメのキャラクターを上手に描ければ、それだけで十分なのでしょうか。
公開されている2027年4月入所・第5期の募集要項を見ると、提出物には履歴書、指定課題、そしてポートフォリオがあります。
ポートフォリオとは、自分の絵や制作物をまとめて、技術や表現力を示す作品集のことです。
第5期の要項では、表紙を含め最大20点とされていました。
その内容にも注目です。
完成したデジタルイラストだけではなく、鉛筆による落書きやラフスケッチ、クロッキーなどを含めるよう求められています。
クロッキーは、人や物の形、動きなどを短時間で捉えて描く練習です。
つまり、完成した一枚絵の見栄えだけでなく、ものの形や動きをどう捉えて描くかを示す資料も必要なのです。
デジタル作画も認められていますが、3DCG作品はポートフォリオの対象外。模写した作品には「模写」と明記する決まりもあります。
書類選考の後には、実技試験や適性検査、最終面接などが予定されていました。[1]
大切なのは、好きな絵を描くことと、仕事としてアニメの絵を描くことは、同じではないという点です。
アニメ制作では、作品ごとの設定や演出に合わせ、多くのスタッフと協力して絵を完成させます。
自分だけの絵を仕上げる技術に加え、作品全体の動きを考える力も必要になります。
2026年11月1日時点で、公式サイトに掲載されている2027年4月入所の第5期募集は終了しています。
エントリー締切は2026年5月11日、書類提出締切は同年5月14日でした。次回の募集日程は、公式サイトでの新しい発表を確認してください。
1年間学んだら、そのまま東映アニメーションに入れる?

ここは、進路を考える人にとって特に重要なところです。
作画アカデミーは、講義を受け終えれば自動的に社員になる仕組みではありません。
1年間のカリキュラムを修了し、所定の審査に合格した人が、有期契約社員として採用されます。
また、2027年度の作画職について、東映アニメーションは通常の新卒採用ではなく、このアカデミーを通した募集を案内しています。[1][3]
ここで、アカデミーの役割が一段とはっきりします。
学校で学んでから、別の場所で仕事を探す。
その一般的な進路とは少し違い、学ぶ段階から制作会社の仕事につながる道が設計されているのです。
公式サイトでは、参考情報として契約社員アニメーターの給与を月額27万900円と掲載しています。これは2025年度の実績であり、将来の採用条件を保証する数字ではありません。
原画コースの修了生は、原画マンや作画監督、キャラクターデザインなどの専門職を目指します。
動画コースでは、動画マンや動画検査などの専門職を目指す道が示されています。
もちろん、こうした職種に必ず就けるという意味ではありません。
ただ、目指す先が具体的だからこそ、何を学ぶべきかも見えやすくなります。
では、なぜ教室は大泉学園にある?

ここまで、受講料、授業内容、先生、就職への道を見てきました。
そして最後に、もう一つ気になることがあります。
なぜ、このアカデミーは大泉学園にあるのでしょう。
会場は、西武池袋線・大泉学園駅から徒歩約15分の「リヴィンオズ大泉店」5階です。
一見すると、よくある商業施設のフロアです。
しかし、大泉には日本のアニメ制作を語るうえで欠かせない歴史があります。
1957年、東映動画(現在の東映アニメーション)の製作所が練馬区東大泉に移転しました。
翌1958年には、日本初の本格的な国産カラー長編アニメ映画『白蛇伝』が完成しています。
そして現在も、大泉には東映アニメーションの制作拠点があります。[2][4]
つまり、この街はアニメ作品のゆかりの地であるだけでなく、実際に作品をつくる仕事が受け継がれてきた場所なのです。
ただし、作画アカデミーの会場が現在の建物に選ばれた個別の理由について、公式資料から明確な説明は確認できませんでした。
大泉のアニメ制作の歴史が、直接その建物の選定理由になったとまでは言えません。
それでも、街の歴史を知ると、商業施設の一角で次世代のアニメーターが育てられていることには、別の意味が見えてきます。
かつてアニメ制作の大きな拠点が生まれた街で、今度は未来の作り手が技術を学んでいる。
大泉は、完成したアニメの思い出が残る街であると同時に、これからのアニメをつくる人が育つ街でもあるのです。
東映アニメーション作画アカデミーの基本情報
ここまでの内容を踏まえ、公式に掲載されている第5期の実施概要を整理します。
- 名称
- 東映アニメーション作画アカデミー
- 運営
- 東映アニメーション株式会社
- 設立
- 2023年度
- 所在地
- 東京都練馬区東大泉2-10-11 リヴィンオズ大泉店5階
- 最寄駅
- 西武池袋線「大泉学園駅」徒歩約15分
- コース
- 原画コース/動画コース
- 受講期間
- 2027年4月〜2028年3月(第5期の予定)
- 実施日
- 原則、月曜〜金曜。土日祝日や指定休講日などを除く
- 時間
- 10:30〜18:00(休憩時間あり)
- 受講料
- 無料
- 奨励金
- 月額15万円(支給条件あり)
- 募集人数
- 原画・動画の各コース若干名
- 第5期募集
- 受付終了(2026年5月締切)
- 公式情報
- 公式サイト・募集要項
応募できるのはどんな人?
第5期では、2027年3月に高校卒業見込みの人や、高校卒業済みから第二新卒までの人などを応募対象とし、年齢不問と案内していました。
高校卒業後に専門学校や大学へ進学した人でも応募できる場合があります。ただし、平日の日中にアカデミーの講義へ集中できることが求められます。
このほか、日本語能力や在留資格に関する条件、他の採用選考との併願制限なども設けられています。
応募を考える場合は、次回募集の正式な要項を必ず確認してください。
一般の人も見学できる?
作画アカデミーは選抜された受講者向けのプログラムです。一般向けの自由見学施設としては案内されていません。
アニメ制作の歴史を身近に知りたい人には、同じ大泉エリアにある「東映アニメーションミュージアム」という選択肢があります。
こちらは一般来館者向けの施設で、入館無料。公開状況や休館日は公式案内を確認してください。
一枚の絵の向こうに、次のアニメをつくる人がいる
最初に気になったのは、授業料0円と月額15万円の奨励金でした。
「どうして、お金を払わずに学べるのだろう?」
その答えをたどると、原画と動画の役割、現役アニメーターによる指導、修了後の審査と採用への道が見えてきました。
そして、その教室があるのは、長くアニメ制作の歴史を重ねてきた大泉です。
アニメを見ているとき、私たちは完成したキャラクターの動きや物語に夢中になります。
けれど、その動きの裏側には、一枚ずつ絵を描き、線を整え、つないでいく人たちがいます。
東映アニメーション作画アカデミーは、そんな作り手を育てる場所でした。
次にアニメのキャラクターが走ったり、笑ったり、振り返ったりする場面を見たとき。
その一瞬の動きに、何枚の絵と、何人の作り手の技術が重なっているのか。
少しだけ、気になってしまうかもしれません。
大泉のアニメの物語を、もう少し先へ
作画アカデミーから見えてきたのは、アニメをつくる人の仕事でした。次は、その仕事が育った街の歴史や、駅前に残された手掛かりをたどってみましょう。
参考資料・出典
情報確認日:2026年11月1日。制度・募集条件は東映アニメーションの公式公開情報を基準としています。募集情報は対象年度によって変更されるため、最新の募集要項を優先してください。
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東映アニメーション作画アカデミー 公式サイト
発行:東映アニメーション株式会社
内容:設立目的、所長・講師、カリキュラム、受講料、奨励金、2027年4月入所第5期の募集要項・選考条件
https://www.toei-anim.co.jp/academy/
確認日:2026年11月1日 -
製作工程と職種
発行:東映アニメーション株式会社 採用サイト
内容:アニメ製作工程、原画と動画の役割、大泉スタジオ、作画アカデミーの人材育成体制
https://recruit.toei-anim.co.jp/recruit_grad/production/
確認日:2026年11月1日 -
募集要項・FAQ
発行:東映アニメーション株式会社 採用サイト
内容:作画職の募集経路、芸術職の採用情報、雇用条件
https://recruit.toei-anim.co.jp/recruit_grad/recruit/requirements.html
確認日:2026年11月1日 -
東映アニメーションミュージアムはなぜ大泉に?
発行:エキリプ編集部
内容:1950年代の東映動画の歴史、大泉とアニメ産業の関係、一般向けミュージアム案内。歴史をたどる補助資料として参照
https://www.ekirip.jp/note/toei-animation-museum-oizumi-history
記事更新日:2026年10月20日
確認日:2026年11月1日