
あの六角形の箱。
箱を開けると、いろいろな表情のコアラたち。
子どもの頃、誰もが一度は食べたことがあるのではないでしょうか。
ロッテのロングセラーお菓子、 「コアラのマーチ」。
ところで、このお菓子がどこで作られているか、知っていますか?
東京?千葉?それとも、コアラの故郷であるオーストラリア?
実は、その答えの一つが埼玉県狭山市にあります。
西武新宿線・新狭山駅の近くにあるロッテ狭山工場は、現在もコアラのマーチを製造している工場です。
ただし、「1984年に商品そのものが狭山工場で開発された」と断定できる公式資料は確認できません。この記事では、商品の誕生と、狭山工場が担ってきた製造の役割を分けてたどります。 [1]
狭山で、あのコアラが作られている。
それだけでも意外ですが、調べていくと、さらに面白いことが分かってきました。
コアラのマーチが発売されたのは、なんと日本に本物のコアラがやってくるより前だったのです。
まだ動物園にコアラが到着していないのに、なぜコアラのお菓子を作れたのでしょうか。
ここから、少し時間を巻き戻してみましょう。
日本にコアラが来る前に、コアラのマーチは生まれていた?
コアラのマーチが発売されたのは、1984年3月。
一方、オーストラリアから日本の動物園へコアラが初めてやってきたのは、同じ年の10月でした。 [2]
つまり、本物のコアラより、お菓子のコアラが約7か月早く日本に登場していたのです。
コアラ、まだ来日していません。
でも、お菓子売り場では一足先に行進が始まっていました。
なぜ、そんなに早く発売できたのか?
その秘密は、商品開発の順番にあります。
ロッテの担当者へのインタビューによると、1980年代初めには、すでに空洞になったビスケットの中にチョコレートを入れる技術が確立されていました。
ただし、技術はあっても、どんな名前で、どんな商品として売るかは決まっていなかったのです。
そんなときに飛び込んできたのが、オーストラリアからコアラが日本にやってくるというニュースでした。 [3]
ここで二つの話がつながります。
新しい製造技術がある。
そこへ、日本に新しい動物がやってくるという話題が現れた。
この二つが結び付いて、コアラのマーチという商品が形になっていったのです。
コアラの形をしたお菓子を作りたくて技術を開発した、という順番ではありませんでした。
先に技術があり、その技術にぴったりのキャラクターとして、コアラが選ばれたのです。
でも、なぜ「コアラのマーチ」?コアラは行進する動物なの?
ここで、商品名が気になってきます。
「コアラ」は分かります。
では、なぜ「マーチ」なのでしょうか。
マーチとは行進のこと。
でも、本物のコアラは、木の上で長い時間を眠って過ごす動物です。
行進どころか、どちらかといえば休憩が得意そうです。
そこに、開発担当者たちの発想がありました。
日本へやってくるコアラたちが、楽器を持ち、明るく楽しくマーチングバンドを組んで行進する。
そんなイメージから「コアラのマーチ」と名付けられたのです。 [3]
最初のコアラたちは、音楽隊だった
発売当時の絵柄は、わずか12種類。
しかも、その約半分は太鼓やラッパなどの楽器を持ったコアラでした。
今ではスポーツや仕事など、さまざまな姿のコアラが描かれていますが、最初は商品名のとおり、音楽隊のイメージが中心だったのです。
ちなみに、六角形のパッケージにも理由があります。
ロッテの担当者によると、コアラが食べるユーカリの木をモチーフにし、売り場でも目立つ箱を考えたそうです。 [3]
いつも何気なく手に取っていた箱にも、ちゃんとコアラらしさが隠れていました。
では、なぜ埼玉・狭山にコアラのマーチの工場がある?

商品が生まれた1984年。
そのとき、埼玉県狭山市には、すでにロッテの工場がありました。
ロッテ狭山工場の始まりは、1969年6月。
最初はキャンディを製造する工場として誕生しました。 [4]
ところが、そこから工場の役割が少しずつ変わっていきます。
1969年
キャンディ工場としてスタート。
1976年
ビスケット専用の第二工場が完成。
1984年
コアラのマーチが発売される。
1990年
糖衣ガムを中心に製造する第三工場が完成。
現在
コアラのマーチ、チョコパイ、キシリトールガム、キャンディなどを製造。
注目したいのは、1976年です。
コアラのマーチが発売される8年前、狭山にはすでにビスケット専用の製造施設ができていました。
コアラのマーチは、ただのチョコレートではありません。
ビスケットを焼き、その中にチョコレートを入れるお菓子です。
だからこそ、ビスケットを作る設備を備えた狭山工場と、この商品とのつながりが見えてきます。
ただし、1976年の第二工場建設がコアラのマーチのためだった、あるいは発売当初から狭山だけで製造されていた、ということまでは確認できません。
確かに言えるのは、狭山工場が現在のコアラのマーチの製造拠点の一つであるということです。 [1]
ロッテ狭山工場は、敷地面積約85,000平方メートル、従業員約800人の規模を持つ工場です。
最初はキャンディ工場だった場所が、半世紀以上を経て、全国の人が知るさまざまなお菓子を作る拠点になっています。 [1]
狭山といえば狭山茶。
もちろん、そのイメージは間違いではありません。
でも、新狭山には、お茶とは違う「身近な味」を作り続けている工場もあるのです。
あの絵柄はどうやって増えた?まゆげコアラは偶然だった

コアラのマーチといえば、食べる前に絵柄を確認したことがある人も多いはず。
スポーツをするコアラ。
何かの仕事をしているコアラ。
ちょっと変わった表情のコアラ。
では、あの絵柄は最初から何百種類もあったのでしょうか。
答えは、違います。
1984年の発売当時は12種類。
1988年には24種類、1991年には48種類へと増えていきました。 [2]
そして、絵柄の人気を大きく変える出来事が起こります。
「まゆげコアラ」は、最初から幸運のキャラクターだった?
かつて、まゆげのあるコアラを見つけると幸せになれる、といううわさが広まりました。
しかし、ロッテの担当者へのインタビューでは、意外な説明がされています。
あの「まゆげ」は、もともとラッパを吹いているコアラの顔のしわを表現したものだったのです。 [3]
まゆげのつもりではなかった。
ラッパを頑張って吹いていただけ。
それを見たお客さんたちが「まゆげコアラ」と呼び、幸運のうわさが広がっていったのです。
企業が最初から仕掛けた特別な当たり柄、という話ではありませんでした。
作り手が描いた「顔のしわ」が、食べる人には「まゆげ」に見えた。
その小さな勘違いから、お菓子の新しい楽しみ方が生まれました。
今は何種類のコアラがいるの?

ロッテの過去のインタビューでは、これまでに誕生した絵柄が約700種類に達するという話も登場します。
ただし、これは歴代の累計について語られた当時の概数であり、現在一度に販売されている絵柄の数とは違います。
2026年10月の公式ブランドサイトでは、絵柄ずかんに375絵柄が案内されています。 [5]
新しい絵柄は、デザイナーとブランド担当者が、流行、スポーツ、職業、イベントなどをもとに考えているそうです。
2019年の35周年記念企画では、一般から4万点を超える応募が集まり、選ばれた35種類が2020年に仲間入りしました。 [3]
コアラのマーチは、作り手だけでなく、食べる人たちのアイデアによっても育ってきたお菓子だったのです。
現在案内されているコアラの絵柄を、ロッテ公式サイトで確認できます。
絵柄はどうやって印刷する?実は甘いインクを使っていた!

ここまでで、コアラの絵柄が少しずつ増えてきたことが分かりました。
では、何百種類ものかわいい絵は、どうやって小さなビスケットに描かれるのでしょうか。
もしかして、一枚ずつ人が描いている?
実は、商品開発の初期には、試作品の絵を一つひとつ筆で描いていたという記録があります。 [6]
しかし、現在の製造工程はもちろん機械が中心です。
ロッテ公式のバーチャル工場見学を見ると、あの小さなお菓子ができるまでに、意外な順番があることが分かります。 [7]
コアラのマーチができるまで
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生地を練り合わせる
小麦粉や砂糖などを混ぜ合わせ、ビスケットの生地を作ります。
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大きなローラーで薄く伸ばす
練った生地を、幅約1メートルの薄く長い帯状にします。
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コアラの絵柄を印刷する
絵柄のついたドラムを使い、カラメルの甘いインクで生地に模様を付けます。
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コアラの形に型抜きする
印刷された生地を、コアラの形に切り抜きます。
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オーブンで焼き上げる
公式の工程紹介では、全長65メートルのオーブンで焼く仕組みが説明されています。
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中にチョコレートを入れる
焼き上がったビスケットの裏側に、注射針を太くしたような機械で穴を開けながらチョコレートを注入します。
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包装して箱に詰める
包装から箱詰めまで、機械で自動的に行います。
-
出荷してお店へ
完成した商品が、全国のお店へ届けられます。
ここで特に注目したいのが、3番目と6番目です。
普通のインクじゃなくて、カラメルのインク?
そうです。
あの茶色い絵柄は、カラメルのインクを使って生地に印刷されています。
紙に印刷するのとは違い、食べるためのお菓子だからこその工夫です。
そして、もう一つの発見。
チョコレートは、ビスケットを焼いた後に入れていたのです。
最初からチョコレートを包んで焼いているわけではありません。
先に空洞のあるビスケットを焼き、その中へチョコレートを注入する。
これが、最初に紹介した「空洞型ビスケットにチョコレートを入れる技術」につながります。
商品開発の話と、現在の製造工程が、ここで一本の線になりました。
あの小さな一粒は、「生地を作る」「絵を印刷する」「型を抜く」「焼く」「チョコレートを入れる」という、いくつもの工程を経て完成しています。
なお、紹介した設備や工程はロッテのバーチャル工場見学による説明です。狭山工場の個別ラインを現地で確認したものではありません。
生地作りから印刷、焼き上げ、チョコレート注入までを、公式のイラストで学べます。
狭山工場は今も進化中。あの箱までリサイクルされている?
1984年に発売されたコアラのマーチ。
40年以上がたちましたが、狭山工場では今も製造が続いています。
しかも、変わっているのはお菓子の絵柄だけではありません。
2025年1月、ロッテは狭山工場で、コアラのマーチの製品箱に関する新しいリサイクルの取り組みを開始しました。
生産時に発生した製品箱などの古紙を回収し、再びコアラのマーチの製品箱に使う仕組みです。 [8]
つまり、あの六角形の箱にも、新しい物語が生まれていました。
ただし、すべての使用済みの箱がそのまま次の箱になるという意味ではありません。製造時に発生した古紙などを対象とする、原料管理を伴ったリサイクルの取り組みです。
お菓子の種類も増えている
2025年5月には、狭山工場に約30億円を投じて新しいグミ製造設備が導入されました。
1969年にキャンディ工場として始まり、ビスケット、ガム、チョコレート菓子へと製造品目を広げ、さらにグミへ。
狭山工場は、昔から同じお菓子だけを作っている場所ではないのです。 [1]
コアラのマーチは長く愛される定番商品ですが、それを作る工場は、時代に合わせて変化を続けています。
狭山のロッテ工場は見学できる?現在の受付状況

ここまで読んだら、実際にお菓子が作られているところを見たくなるかもしれません。
しかし、ここは注意が必要です。
ロッテ公式サイトでは、狭山工場の工場見学について、現在申し込みを中止していると案内されています。
再開の目途が立った場合は、公式サイトで案内するとのことです。現時点で再開日は確認できません。 [1]
過去には狭山工場でも見学者を受け入れ、製造工程について学ぶ取り組みが行われていました。
ただし、昔の見学体験談や料金、開催時間などを、現在も利用できる情報として扱わないようにしましょう。
ロッテのお菓子作りを学びたいなら?
ロッテでは、さいたま市の浦和工場にある見学施設「おかしの学校」を案内しています。
こちらはガーナチョコレートやパイの実などを題材に、お菓子作りや品質管理について学べる施設です。
狭山工場のコアラのマーチ製造ラインを見学するものではありませんが、ロッテのお菓子作りを知る別の選択肢になります。
申し込み条件や空き状況は、必ず公式サイトで確認してください。 [1]
- 施設名
- 株式会社ロッテ 狭山工場
- 所在地
- 埼玉県狭山市新狭山1-2-1
- 最寄り駅
- 西武新宿線「新狭山駅」
- 立地
- 川越・狭山工業団地の西側、国道16号線沿い
- 主な製造品目
- コアラのマーチ、チョコパイ、キシリトールガム、のど飴など
- 工場見学
- 申し込み受付休止中(2026年10月22日確認)
- 公式案内
- ロッテ工場見学公式ページ
工場は観光施設として自由に出入りできる場所ではありません。見学受付の再開までは、無断での敷地内への立ち入りは控えてください。
次にコアラのマーチを開けるとき、狭山の街を思い出すかもしれない
最初に登場した、あの六角形の箱。
何気なく食べていた一粒のお菓子には、思っていた以上にたくさんの工夫が詰まっていました。
日本にコアラが来る前に発売されたこと。
新しいビスケット製造技術と、コアラ来日のニュースが出会って生まれたこと。
ラッパを吹く顔のしわが、いつの間にか幸運の「まゆげ」になったこと。
そして今も、埼玉県狭山市の工場で、あの小さなコアラたちが作られていること。
新狭山といえば、工場が集まる街。
でも、その工場で作られているものが、子どもの頃からよく知っているお菓子だと分かると、街の印象が少し変わります。
次にコアラのマーチの箱を開けたら、食べる前に一粒だけ、絵柄を眺めてみてください。
その小さなコアラの背景には、1984年から続く商品開発の物語と、狭山のものづくりがつながっています。
いつものお菓子が、少しだけ違って見える。
それも、身近な街の歴史を知る面白さなのかもしれません。
参考資料・出典
この記事は、ロッテの公式発表、商品開発担当者へのインタビュー、公式の製造工程紹介などをもとに構成しています。
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ロッテ|工場見学・狭山工場紹介
工場の沿革、所在地、製造品目、見学受付状況。
https://www.lotte.co.jp/kengaku/ -
ロッテ|コアラのマーチの歴史
1984年の発売、コアラ初来日、歴代の絵柄数など。
コアラのマーチ公式年表 -
ロッテ|これまで誕生したキャラクターは約700種。コアラの絵柄はどのようにして誕生した?
商品開発担当者へのインタビュー。命名、開発技術、絵柄、まゆげコアラの背景。
ロッテ公式インタビュー -
ロッテ|ロッテの歩み
1969年の狭山キャンディ工場完成、1984年のコアラのマーチ発売など。
ロッテ公式沿革 -
ロッテ|コアラのマーチ ブランドサイト
2026年10月時点の絵柄ずかんの案内。
コアラのマーチ公式サイト -
中小企業基盤整備機構 J-Net21|「コアラのマーチ」お客さまがブランド価値に気づかせてくれた
2013年8月21日掲載。初期の商品開発と絵柄の試作、口コミによる広がり。
J-Net21 記事 -
ロッテ|コアラのマーチができるまで
バーチャル工場見学。生地作り、カラメル印刷、焼成、チョコレート充填、包装の工程。
ロッテ公式バーチャル工場見学 -
ロッテ|コアラのマーチ製品箱へのクローズドリサイクル開始
2025年1月23日発表。狭山工場の製品箱の資源循環に関する取り組み。
ロッテ2025年ニュースリリース一覧
※歴代絵柄の累計数と、公式サイトで現在案内されている絵柄数は異なります。
※製造工程はロッテ公式のバーチャル工場見学に基づくもので、狭山工場での独自取材ではありません。
※狭山工場の見学受付状況は変更される場合があります。
最終情報確認:2026年10月22日
編集・構成:ekirip編集部