
壁一面に200種類以上のメニュー。
清瀬の「みゆき食堂」は、なぜこんなに選べるのか?
壁一面を埋め尽くす、料理名の書かれた細長い紙。
ラーメン、定食、炒め物、餃子、酒のつまみ。視線を動かすたびに、別の料理が見つかります。
これは、清瀬駅南口にある「みゆき食堂」の名物、短冊メニューです。
メニューは200種類以上。数が多いのはうれしいけれど、ここまでくると注文する前にひと仕事です。 [1]
いったい、どうしてこれほどの料理を並べられるのでしょう。
しかもこの店は、テレビドラマ『孤独のグルメ』に登場したことでも知られています。
最初の手掛かりは、派手な料理でも、テレビの人気でもありません。
50年以上にわたって食事を作り続けてきた、家族の食堂であること。
この事実をたどると、壁いっぱいの短冊が、少し違って見えてきます。
みゆき食堂は、清瀬駅南口から徒歩約2分。 1970年創業とされる大衆食堂です。 2014年7月9日放送の『孤独のグルメ Season4』第1話に登場しました。 2026年10月確認の掲載情報では、営業は火・水・金・土曜の11:00〜21:00、月・木・日曜が定休日です。 臨時休業や変更の可能性があるため、訪問前の確認がおすすめです。 [2] [3]
なぜ壁いっぱいに短冊が?200種類以上という不思議

一般的な飲食店なら、メニュー表を開けば料理の一覧が見つかります。
ところが、みゆき食堂では壁そのものが巨大なメニュー表。
テレビ東京が2025年2月に公開した密着取材記事でも、店内に200種類以上の料理が掲げられていると紹介されています。 [1]
200種類。
一日一品ずつ違う料理を注文しても、すべて食べるまで半年以上かかる計算です。
しかも、定食だけではありません。
麺類、ご飯もの、炒め物、揚げ物、小皿料理など、食堂で食べたいものが次々と現れます。
では、なぜこんなに幅広いのでしょうか。
ここは少し慎重に考えたいところです。
メニューが増えた理由について、店主が一つの理由を明言した資料は今回確認できませんでした。
ただし、現在の店の姿から読み取れる特徴があります。
みゆき食堂は、定食を食べる店であると同時に、一品料理を楽しめる店でもあるのです。
お腹いっぱいご飯を食べたい人もいれば、小皿料理をいくつか頼みたい人もいる。
一つの店で、食事の仕方をいくつも選べます。
メニューの多さは、そんな幅広い利用の仕方と相性がいいのでしょう。 これは店の料理構成から考えられる解釈であって、創業当時からの経営方針を証明するものではありません。
短冊は、料理の数だけ選択肢があるということ
食べたい料理が決まっている人には、豊富なメニューは心強いものです。
ところが、まだ決まっていない人には少々手ごわい。
カレーに決めかけたところで餃子が目に入り、その隣には炒め物。気づけば最初から考え直している。
「食べたいものがない」ではなく、「食べたいものが多すぎる」。
このうれしい困りごとこそ、みゆき食堂の面白さなのかもしれません。
そして、この困りごとをテレビの前で全国の視聴者と共有した人物がいます。
『孤独のグルメ』の井之頭五郎です。
『孤独のグルメ』の五郎さんは、何を食べた?
みゆき食堂が登場したのは、2014年7月9日放送の『孤独のグルメ Season4』第1話。
その回のタイトルは「東京都清瀬市のもやしと肉のピリ辛イタメ」です。 [2]
主人公の井之頭五郎は、仕事で清瀬を訪れます。
商談を終えてお腹がすいた五郎は、駅近くで見つけたみゆき食堂へ。
そこで待っていたのが、あの短冊の壁でした。
テレビ東京の公式あらすじでも、膨大なメニューを前に五郎が圧倒される様子が描かれています。
食べることには真剣な五郎さん。
それでも、200種類以上はなかなかの難敵です。
選び抜いた料理は、意外にも身近なものだった
では、そんな五郎が最終的に注文したのは、どんな料理だったのでしょう。

番組のサブタイトルにもなった一皿。もやしと肉を使った、白いご飯と相性のよい炒め物です。
味噌の風味に青唐辛子の辛さを合わせた一品。小さな料理でも存在感があります。
ハーフは3個。大きな餃子の存在感が印象的なメニューです。
周囲の客の食事に影響されて追加。五郎が最後まで食欲に忠実であることを感じさせる一品です。
これらにご飯と味噌汁も合わせています。 [2]
なんだか面白い組み合わせです。
炒め物に、餃子に、味噌にんにく。さらに焼き鳥まで。
コース料理のように最初から完成された組み合わせではありません。
そのとき食べたいものを、自分で組み立てる食事。
ここに、みゆき食堂らしさがよく表れています。
テレビ東京の公式ページには、放送当時の料理やエピソードが紹介されています。なお、2014年の放送内容と現在のメニュー・価格が完全に同じとは限りません。 [4]
でも、200種類以上を誰が作る?厨房の裏側にいた家族

ここで、もう一つ気になることがあります。
これほど多くの料理を、いったい誰が作っているのでしょう。
2025年2月18日、テレビ東京は「有吉木曜バラエティ」で放送されたみゆき食堂の密着取材を記事にしました。
取材では27台のカメラを設置し、2日間にわたって店の様子を記録しています。 [1]
そこで紹介されたのが、店主の尾﨑彰一郎さんと妻の由美子さんです。
取材当時、彰一郎さんは75歳、由美子さんは76歳。
結婚55年という夫婦が、厨房で次々と料理を仕上げていました。
開店前から始まっている、長い一日
番組の主な取材日は、2024年10月18日。
朝8時すぎ、店主は厨房で米を研ぎ、キャベツを切り始めます。
9時ごろには仕入れへ出かけ、その間は妻が仕込みを進めます。
午前10時30分ごろにはスタッフが集まり、開店準備が本格化。
この日は予定より少し早い10時50分にシャッターを開けると、すぐにお客さんが入ってきました。 [1]
まだ、お昼前です。
お客さんにとっての食事が始まるころ、厨房ではすでに何時間もの仕事が進んでいたわけです。
さらに取材記事には、店主がチャーハンを皿へ移すと、妻がすぐに形を整える場面も登場します。
長年一緒に働いてきた夫婦の連携が、たくさんの注文を支えていました。
壁に並ぶ200種類以上の短冊は、同時に厨房へ寄せられる200種類以上の期待でもあります。
ただし、これほどの品数をどのように仕込み分け、調理しているのか、その全体の仕組みまでは確認できません。
確かに分かるのは、店を動かしているのが料理名の数だけではなく、早朝からの準備と家族・スタッフの働きだということです。
1970年から続く食堂。なぜ「昭和」が今も残っている?

みゆき食堂の創業は、店舗情報によると1970年。
テレビ東京の2025年の記事でも、創業約55年の店として紹介されています。 [1] [3]
1970年といえば、大阪万博が開かれた年です。
そんな時代に始まった食堂が、半世紀を超えて清瀬駅前で営業を続けてきました。
店内の短冊や昔ながらの食堂らしい雰囲気は、昭和をテーマに新しく演出した空間とは少し性格が異なります。
昭和に始まった店が、その後も営業を続けている。
この時間の積み重ね自体が、みゆき食堂の特徴なのです。
ドラマになったのは、開店から約44年後
清瀬駅南口近くの大衆食堂として営業を開始したとされます。
Season4第1話の舞台となり、壁いっぱいの短冊メニューが全国の視聴者に紹介されました。
長年店を支えてきた夫婦や家族、スタッフの仕事ぶりが記録されました。
創業約55年の食堂と、これから店をどう続けていくかという家族の思いが紹介されました。
注目したいのは、ドラマに登場した2014年です。
その時点で、店はすでに約44年も続いていました。
つまり、みゆき食堂は『孤独のグルメ』に出るために生まれた食堂ではありません。
長年続いていた日常の食堂を、ドラマが見つけたのです。
この順番を知ると、店の見方が少し変わります。
テレビに映った昭和風のセットではなく、長く営業を続けてきた食堂の実際の姿。
その違いは、なかなか大きいものです。
あの短冊メニューは、これからも残るのか?
半世紀以上続いた店だと知ると、次はこの先が気になります。
みゆき食堂は、これからも同じように営業を続けていくのでしょうか。
実は2024年の密着取材で、その話題が登場しています。
テレビ東京によると、店主夫婦だけでなく、娘の坂入彰代さんや孫の浩彰さんも店に関わっています。
取材当時、孫の浩彰さんは学業の合間に週4日、店を手伝っていました。 [1]
店の将来について、娘さんは無理のない規模で続ける可能性にも触れています。
一方、店主は、次の世代が昔の店と比較されることを心配していました。
ここに、長年続いた食堂ならではの難しさがあります。
料理を受け継ぐことと、これまでとまったく同じ店を続けることは、必ずしも同じではありません。
店の名前を残してほしいという期待がある一方で、次の世代には次の世代の暮らしや働き方があります。
そんな話の中で、店主が「みゆき食堂」を「ゆきみ食堂」に変えたらいいと冗談を言い、家族が笑ったことも紹介されています。
深刻になりがちな話題の中に、少しだけ笑いが入りました。
もちろん、実際に改名が決まったという意味ではありません。
2026年10月時点で、将来の営業形態やメニューの継承について確定した公式情報は確認できていません。
それでも、この取材から一つ分かることがあります。
みゆき食堂の歴史は、建物やメニューだけでなく、そこに立つ人たちによって続いてきたということです。
壁いっぱいの短冊を見ると、つい料理の多さに目を奪われます。
けれど、その短冊を日々の料理に変えてきた人たちがいる。
そこまで知ると、この食堂の魅力は「レトロで面白い店」という一言には収まらなくなります。
初めて行くなら、何を注文すればいい?
さて、ここまで読んで実際に行きたくなったとしても、一つ問題が残ります。
200種類以上のメニューから、最初の一品をどう選ぶか。
せっかくなら、選び方を少しだけ考えておきましょう。
① 『孤独のグルメ』の料理をたどる
ドラマのファンなら、五郎が食べた「もやしと肉のピリ辛イタメ」「ジャンボ餃子のハーフ」「味噌にんにく青唐辛子入り」などが候補になります。
訪問レポートや口コミでは、放送回にちなんだ「五郎さんセット」の掲載例もあります。 [5]
ただし、現在も同じ料理やセットが提供されているか、価格がいくらかは、注文前に店頭で確認してください。
② とにかくお腹を満たしたいなら定食やご飯もの
みゆき食堂は、料理のボリュームについてもたびたび紹介されています。
カツカレーや定食などは、しっかり食べたい人の候補になります。
一方で、量が多かったという訪問者の報告もあります。 [6]
初めてなら、料理の大きさを確かめながら注文する方が安心です。
③ いろいろ味わうなら、小皿料理を組み合わせる
炒め物や餃子、おつまみなどを選び、一品ずつ楽しむのも、この食堂のメニュー構成に合った注文方法です。
ただし、たくさん頼めば必ず食べ切れるとは限りません。
メニューを見ていると、あれもこれも欲しくなるでしょう。
200種類に対抗しようとせず、まずは食べ切れる量から。
五郎さんの食欲に追いつく必要はありません。
短冊メニューは壁に掲示されているため、座る位置によっては見渡しにくいことがあります。写真撮影の可否や店内のルールを確認し、迷ったときはスタッフにおすすめや料理の量を尋ねるのもよいでしょう。混雑時は周囲への配慮も忘れずに。
みゆき食堂の営業時間・アクセス
11:00〜21:00
最終情報確認日:2026年10月20日。営業時間・定休日・支払い方法等は公開店舗情報に基づきます。臨時休業、貸切営業、売り切れ、価格改定などは反映されていない場合があります。訪問前に店舗の最新案内をご確認ください。 [3]
壁いっぱいの短冊が、少し違って見えてくる

最初に気になったのは、壁一面に並ぶ200種類以上のメニューでした。
どうしてこんなに多いのだろう。
調べてみると、定食から一品料理まで幅広い食べ方ができること、ドラマの五郎さんまで注文に迷ったこと、そして半世紀以上にわたって家族が店を支えてきたことが分かりました。
一方、メニューが200種類以上に増えた具体的な経緯までは分かっていません。
それでも、あの短冊が単なる昭和風の飾りではないことは確かです。
書かれているのは、それぞれ実際に注文できる料理の名前。
そして、その注文を受け止めてきた厨房と人たちがいる。
次にみゆき食堂の壁を見る機会があれば、料理名を数えるだけでなく、その向こうにある毎日の仕事にも思いを向けてみたくなります。
200種類以上のメニュー。そこに書かれていない、この店の長い物語もまた、みゆき食堂の味わいの一つです。
参考資料・出典
-
[1] テレビ東京「テレ東プラス」
『孤独のグルメ』舞台の食堂に密着 「比較されるとかわいそうだ」70代店主の本音
公開日:2025年2月18日
https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/entertainment/entry/202502/16491.html
確認日:2026年10月20日 -
[2] テレビ東京
『孤独のグルメ Season4』第1話 公式ストーリー
放送日:2014年7月9日
https://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume4/story/story01.html
確認日:2026年10月20日 -
[3] 食べログ
みゆき食堂 店舗情報
住所、交通、営業時間、定休日、支払い方法、創業年等
https://tabelog.com/tokyo/A1328/A132803/13040781/
確認日:2026年10月20日 -
[4] テレビ東京
『孤独のグルメ』Season4 第1話 料理紹介・放送記録
https://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/40105.html
確認日:2026年10月20日。掲載店舗情報の基準は2015年8月時点 -
[5] ヨムーノ
孤独のグルメに出たお店【グルメレポ】東京・清瀬市「みゆき食堂」おすすめメニュー
公開日:2025年6月23日
https://yomuno.jp/posts/126349
確認日:2026年10月20日。価格等は記事掲載時点の情報 -
[6] ガジェット通信 GetNews
孤独のグルメ聖地「みゆき食堂」で絶対食べるべき料理と攻略法を地元民が教えてあげる
https://getnews.jp/archives/3452747
確認日:2026年10月20日。訪問者による体験記事
本記事は公開資料と店舗情報を基に構成しています。 エキリプ編集部による現地実食・店主への直接取材を行った記事ではありません。 メニューの種類・価格・営業条件は変更される場合があります。 ドラマの描写と現在の店舗運営は区別して紹介しています。