
西武新宿線|下井草・井荻|町の文房具店
学校の前にある、創業90年以上の文房具店。
下井草にある「すどう文具店」は、1934年3月に創業しました。
ところが、その歴史を調べていくと、ちょっと意外なものが登場します。
ヒマラヤ杉が、2本。
文房具店なのに、なぜ木が出てくるのでしょう。
実は、この2本の木こそ、お店と学校の長いつながりを教えてくれる手掛かりなのです。
創業1934年。でも、学校ができたのはその後だった?

すどう文具店があるのは、東京都杉並区下井草4丁目。西武新宿線の下井草駅と井荻駅のどちらからも、徒歩約10分の場所です。
お店の目の前には、杉並区立桃井第五小学校があります。
学校の近くに文房具店がある。鉛筆やノートを買うことを考えれば、ごく自然な組み合わせです。
ところが、創業年を調べると、少し順番が違いました。
すどう文具店の創業は1934年(昭和9年)3月。一方、桃井第五小学校が現在地で独立開校したのは、同じ年の9月1日だったのです。[1][2]
お店のほうが、およそ半年早い。
てっきり学校があって、そこに文房具店ができたのかと思いましたが、少なくとも創業と開校の順番は逆でした。
学校側の記録によると、1934年の開校時には308人の児童が7学級で学び始めています。また、学校の前身となる分教場は1903年から存在していました。[2]
つまり、1934年はこの土地に初めて教育の場が生まれた年ではなく、桃井第五小学校が現在地で新たな出発をした年です。
そして、すどう文具店もその年に創業していました。
同じ年に始まった、店と学校の歩み。
では、そこにヒマラヤ杉がどう関係するのでしょうか。
文房具店の初代店主が、学校に贈ったものとは?

すどう文具店の公式サイトには、創業時の出来事として、ある記録が残されています。
初代店主が、桃井第五小学校の開校にあたってヒマラヤ杉を2本寄贈したというのです。[1]
鉛筆でもノートでもありません。
木です。
しかも、2本。
公式サイトによると、そのヒマラヤ杉は学校の北西の角と西門にあり、杉並区の保護樹林に指定されていると紹介されています。
そして、すどう文具店から正面に見ることができるそうです。[1]
文房具店と学校の関係は、商品を売ることだけではなかった。
初代店主は、学校の開校にあたり木を贈っていました。店の歴史が、学校の敷地に残る木とも結び付いていたのです。
なぜヒマラヤ杉を選んだのか。寄贈を決めた具体的な経緯までは、公開資料から確認できません。
それでも、学校の開校を祝う行動として2本の木が贈られたことは、お店自身の記録に残っています。
学校の前にある文房具店。
その関係は、私たちが思っていたよりも少し深いものだったようです。
では、学校が増えた1930年代、この街では何が起きていた?

もう一つ気になるのは、1934年という時代です。
どうして、この時期に新しい学校が必要だったのでしょう。
手掛かりは、杉並区が紹介している地域の発展の歴史にありました。
1927年、西武鉄道の村山線が開通し、下井草駅や井荻駅が設置されました。その後、鉄道沿線には都心へ通う人々の住宅地が広がっていきます。[3]
人が住むようになれば、当然、子どもたちが通う学校も必要になります。
杉並区の資料によれば、当時の井荻町長・内田秀五郎は、将来の児童数増加を見越して学校の増設を進めました。1927年に学校建設の方針が議決され、桃井第二小学校から第五小学校へと新しい学校が整備されていきました。[4]
つまり、桃井第五小学校の開校は、偶然の出来事ではありません。
鉄道の発達と住宅地の成長によって、地域の教育環境も整えられていった時代だったのです。
その1934年に、すどう文具店も創業しました。
ただし、学校建設を見越して出店したのかどうかは確認できません。ここは分けて考える必要があります。
確かなのは、街が大きく変わっていた時代に、店と学校が同じ年に現在へつながる歴史を始めたということです。
かつては教科書まで売っていた。文具店の役割はどこまで広かった?

今では、学校の教科書を文房具店で買う場面を想像しにくいかもしれません。
ところが、すどう文具店は、かつて教科書の販売も行っていました。
公式サイトによると、昭和40年代ごろから近隣の小学校・中学校・高校に向けて、指定教科書や運動着、上履きなどを扱っていたそうです。
そして、2005年(平成17年)まで、学校の教科書を販売していたと記録されています。[1]
ノートを買う場所であり、教科書を扱う場所でもある。
学校生活に必要なものが、かなり幅広く集まっていたのです。
さらに興味深いのが、2代目店主の須藤正巳さんの活動です。
桃井第五小学校の盆踊りの指導や少年野球チームの監督を務め、1977年(昭和52年)にはPTA会長に就任したことが、店の沿革に記されています。[1]
なるほど。文房具を売る店でありながら、店主自身も学校や地域の活動に関わっていたのです。
文具店というより、学校と町の暮らしに寄り添う商店。
そう考えると、創業時に贈られた2本のヒマラヤ杉も、少し違った意味を持って見えてきます。
すどう文具店が創業。
桃井第五小学校が現在地に開校。初代店主がヒマラヤ杉2本を寄贈。
近隣の学校に向けて教科書、運動着、上履きなどを取り扱う。
2代目店主が桃井第五小学校のPTA会長に就任。
学校教科書の販売を続ける。
須藤洋介さんが4代目店主に就任。
創業90周年を迎える。
そして現在。ちいかわも、10円ガムも、上履きも?

ここまで歴史をたどってきましたが、現在のお店はどのような品ぞろえなのでしょう。
公式サイトを調べると、昔ながらの学用品だけではありませんでした。
なんと、「ちいかわグッズ」も紹介されています。[1]
創業90年以上の文房具店で、ちいかわ。
思わず年代を確認したくなる組み合わせですが、4代目へと引き継がれた店には、現在のキャラクター商品もあるようです。
公式サイトに掲載されている主な商品・サービスを整理すると、次のようになります。
10円ガムを買いに来た子どもと、事務用品を探す大人が、同じお店を利用できる。
これも町の文房具店らしいところです。
また、店頭にない商品の取り寄せに対応できる場合もあり、入学・進級・卒業・表彰などの記念品についても相談を受け付けています。[1]
価格が確認できた商品は?
公式サイトで金額が明記されていたものには、「10円ガム」があります。
ほかにも一部商品について定価から10%引きとの案内がありますが、対象品や価格の詳細は掲載画像などでの確認が必要です。
鉛筆・上履き・ちいかわグッズなどの個別販売価格は、今回確認した公開情報では十分に特定できませんでした。
商品価格と在庫は変わるため、特定の商品が目的の場合は事前に問い合わせると確実です。
文房具店なのに、アイスも宅急便もある理由
さらに公式サイトを読み進めると、取り扱いは文房具の枠を超えていきます。
セブンティーンアイスの自動販売機、公衆電話、切手、宅急便。
文房具店の紹介を読んでいたはずが、気づけば生活サービスの一覧になっています。
なぜ、これほど幅広いのでしょう。
その答えに近い言葉が、公式サイトに掲載されたお店の使命にあります。
すどう文具店は、地域社会の一員として、文具・郵便・宅配便・嗜好品などを通じて、便利で楽しい生活に貢献することを掲げています。[1]
つまり、文具だけを扱うというより、地域の日常に必要なものを提供することを重視しているのです。
2022年には4代目店主の須藤洋介さんが就任。同年5月には食品衛生管理者の資格を取得し、お菓子類の販売に関する安全面を強化したことも公式沿革に記載されています。
また、かつて学校で使用する教科書を売っていた店が、現在も学用品やお菓子などを扱っている。
商品の顔ぶれは変わっても、学校のそばで暮らしを支えるという役割には、つながりが見えてきます。
もう一つの意外な記録。チェコの漫画にも描かれた?
すどう文具店には、海外とのちょっと不思議な接点もあります。
公式サイトによれば、2021年9月、杉並区立郷土博物館分館で開催された展示企画に、同店が取り上げられたというのです。
関係しているのは、チェコの西ボヘミア大学で企画された「IOGI」。コミック作家のヴァーツラフ・シュライフ氏らが、杉並の日常を漫画として描いた企画です。[1]
昭和9年創業の文房具店が、海外のアーティストの目に映る杉並の風景にも登場した。
なかなか予想できない展開です。
残念ながら、今回の調査では作品の具体的な場面や掲載ページまでは確認できませんでした。
それでも、地元の子どもたちが使う店という存在が、海外の人に杉並を伝える題材にもなったことは印象的です。
町にとって当たり前の風景が、外から見ると一つの文化になる。
そう考えると、身近な文房具店も少し面白く見えてきます。
すどう文具店の営業時間・アクセス
店舗案内
- 店舗名
- すどう文具店
- 所在地
- 〒167-0022 東京都杉並区下井草4-26-1
- 最寄り駅
- 西武新宿線 下井草駅・井荻駅から徒歩約10分
- バス
- 関東バス「中瀬中」から徒歩約5分
- 営業時間
- 火〜土曜日 10:00〜12:30/13:30〜17:30
- 定休日
- 日曜日・月曜日・祝日
- 電話番号
- 03-3390-9898
- 宅急便の持ち込み
- 営業日の16:00まで
- 公式情報
- すどう文具店公式サイト
- すどう文具店 LINE公式アカウント
- 地図
- Googleマップで場所を確認
※2026年11月4日時点のWeb掲載情報。営業時間・休業日・商品・決済手段などは変更される場合があります。訪問前に公式情報をご確認ください。
口コミと公式発信から見える、町の文房具店
お店を紹介する情報は、公式サイトやLINE公式アカウントのほか、Yahoo!マップにも掲載されています。
Yahoo!マップに掲載された2022年の口コミには、学校で必要なものやかわいい商品があり、店員が名前を呼んでくれるといった内容の投稿もあります。[5]
もちろん、これは一人の利用者による過去の感想であり、現在の接客や商品の状況を保証するものではありません。
それでも、お店が単なる購入先としてだけでなく、人とのやり取りのある場所として利用されてきた様子がうかがえます。
公式LINEでは営業時間や休業日などを案内。公式サイトには商品、記念品の相談、学校との歴史まで掲載されています。
町の小さなお店ですが、その情報は意外なほど充実しています。
90年以上続く文房具店。その正面には、今も2本の木がある
最初は、ただ学校の前にある古い文房具店だと思っていました。
でも、1934年に創業した店が、同じ年に開校した学校へ2本のヒマラヤ杉を贈っていた。
その後、教科書や上履きを扱い、店主はPTAや地域活動にも関わってきました。
今では4代目に引き継がれ、学用品だけでなく、ちいかわグッズやお菓子、郵便・宅配便のサービスまで取り扱っています。
そして、お店の公式サイトには、初代店主が寄贈した木が今も学校にあると記されています。
90年以上前に贈ったものが、今も店の正面に残っている。
文房具なら使えば短くなり、ノートなら書けばページが埋まります。
けれど、創業当時に贈られた木は、店と学校が歩んできた時間を伝える存在になっています。
下井草・井荻の間を歩くとき、すどう文具店と学校の木を見かけたら、その2つを一緒に眺めてみてください。
いつもの通学路や住宅街の風景に、1934年から続くもう一つの時間が見えてくるかもしれません。
文房具店から、もう一つの街の物語へ
文房具店は、時代に合わせて役割を変えることもあれば、地域との関係を受け継いでいくこともあります。別の西武線沿線でも、そんなお店の歴史をたどれます。
次の一話|練馬駅・老舗文具店 練馬のIDEALは創業97年の老舗文具店だった! 1929年創業の精美堂が、2022年にIDEALへ生まれ変わった物語。すどう文具店とは違う、老舗の進化を読み解きます。 もう一つの発見|八坂駅・かわいい文具 八坂駅近くにかわいい文具の店があった? 昔の店舗情報と現在の商業施設の姿を比較。文房具店の記録から、街の変化を探る一話です。現在の営業状況は未確認です。参考資料・出典
- すどう文具店「公式サイト・店舗案内・取り扱い商品・すどう文具店のあゆみ」
https://sudo-bungu.com/
確認日:2026年11月4日 - 杉並区立桃井第五小学校「学校だより 2023年10月号・桃五小の歴史」
学校だよりPDF
確認日:2026年11月4日 - 杉並区「西武新宿線沿線まちづくり」
杉並区公式ページ
確認日:2026年11月4日 - 杉並区「内田秀五郎のしごと」
杉並区公式ページ
確認日:2026年11月4日 - Yahoo!マップ「すどう文具店」店舗情報・利用者口コミ
Yahoo!マップ掲載ページ
確認日:2026年11月4日 - すどう文具店 LINE公式アカウント「店舗紹介・営業時間」
https://page.line.me/916xffaz
確認日:2026年11月4日
編集注:商品の在庫や個別価格、教室の実施日などは公開情報だけでは十分に確認できないため、断定していません。歴史に関する記述は店舗・学校・自治体の公開資料を優先しています。