
江古田に、入口からは想像できないほど奥行きのある雑貨屋がありました。
店名は「オイルライフ(OILife)」。
海外から届いた珍しい雑貨、ハンドメイドの一点もの、食器、アクセサリー、香りのアイテム。
それだけでも楽しそうなのに、このお店にはもう一つ、少し不思議な特徴がありました。
2003年に開業し、2006年には店の奥へと拡張。しかも、その奥の空間は時代によって姿を変えていたのです。 [1][2]
どうして雑貨屋の奥に、そんな変化が生まれたのでしょうか。
その答えを追うと、江古田の街で23年以上続いたお店の、ちょっと意外な物語が見えてきます。
オイルライフは2026年8月29日に最終営業日を迎えました。 店舗公式サイトに、23年6か月にわたる営業への感謝と、最終日を迎えたことが記されています。 [1]
この記事は現在営業している店舗の買い物ガイドではなく、江古田で長く親しまれた雑貨店の歴史をたどる記事です。
「オイルライフ」って、なぜオイル?

まず気になるのが、その名前です。
オイルライフ。
オイルという言葉を聞くと、食用油やアロマオイルを思い浮かべるかもしれません。
実際、江古田駅北口商店会の紹介には、アロマオイルやフレグランスグッズも登場します。 [3]
ところが、この名前には、商品そのものとは少し違う意味が込められていました。
2021年の地域取材記事に残された店名の説明によると、オイルは人々の暮らしを豊かにする「潤滑油」のイメージ。ライフは、もちろん日々の生活です。 [4]
つまり、暮らしをなめらかに、心地よくするための雑貨屋という願いが、この名前の背景にありました。
油を売る店、という意味ではなかったのですね。
けれど、ここで次の疑問が生まれます。
生活を豊かにする雑貨屋なら、食器や文房具を並べれば十分そうです。
それなのに、どうして海外の珍しい品や手作りの一点ものまで、これほど幅広く扱っていたのでしょうか。
なぜ、海外の珍しいものから一点ものまで集めた?

江古田駅北口商店会が紹介していたオイルライフの商品は、実に多彩でした。
海外バイヤーが買い付けたアイテム、手作りのオリジナル作品、食器、アクセサリー、服飾雑貨、アロマオイル、フレグランスグッズ。 [3]
「雑貨」という言葉の守備範囲が、なかなか広いお店です。
ただし、ここで大切なのは商品の種類だけではありません。
国内外から選ばれたものと、作り手の個性が出る作品が、一つの店に集まっていたこと。
量産された実用品には、いつでも同じものを探しやすい良さがあります。
一方、海外で買い付けた珍しい品やハンドメイド作品には、そのとき出会えたものを選ぶ楽しさがあります。
もちろん、店内のすべての商品が一点ものだったわけではありません。オイルライフは、日常的に使う生活雑貨や食器も扱うセレクトショップでした。
だからこそ、普段使いのものと、ちょっと変わったものを一緒に探せたのでしょう。
作り手にとっても開かれたお店だった
商店会の店舗紹介には、もう一つ興味深い案内が残っています。
ハンドメイド作家を募集していたのです。 [3]
商品を仕入れて販売するだけではなく、作り手の作品を紹介する役割も担っていたことがうかがえます。
この情報だけで、すべての作家がどのような契約で参加していたかまでは分かりません。
それでも、オイルライフが目指した「暮らしに潤いを届ける」という考え方は、買う人だけでなく、ものを作る人とのつながりにも表れていたと読み取れます。
では、そんな幅広い商品を並べる場所は、最初から用意されていたのでしょうか。
実は、そうではありませんでした。
入口は小さいのに、なぜ店の奥が深かった?

ここから話は2003年へ戻ります。
オイルライフが開店した当時、店舗は現在知られている形よりも小さく、手前側のスペースだけで営業していました。
生活雑貨、文房具、洋服、バッグ、アクセサリー、ガーデングッズ。
小さなスペースに、さまざまな商品を集めていたことが、店舗公式サイトの沿革に記されています。 [2]
そして、2006年。
お店は壁を抜いて、奥のスペースへと広がりました。
入口からは想像しにくい奥行きのある店舗になったのです。
公式サイトでは、この細長い形を「鰻の寝床」と表現しています。 [2]
うなぎの寝床。
雑貨屋の説明としては、なかなか忘れられない言葉です。
しかも、単に売り場を広げただけではありませんでした。
別の時期に公開された公式の店舗紹介では、二人のバイヤーがいることを踏まえ、手前と奥で雰囲気の異なる空間にしたことも説明されています。 [2]
一つの雑貨屋なのに、奥へ進むと別の世界が現れる。
小さな入口と深い奥行きは、店の成長の記録だったわけです。
ただ、オイルライフの奥は、その後も同じ姿であり続けたわけではありません。
ここからが、このお店の歴史でも特に面白いところです。
雑貨屋の奥に、別のお店まで生まれた?

2006年に広がった奥の空間は、年月とともに役割を変えていきました。
かつては、手前側で食器や香りのアイテムなどを扱い、奥側ではステーショナリーなどを中心にした「ニュークリアス」という売り場を展開していました。 [5]
ここまでは、まだ一つの雑貨店の中の話です。
ところが、その後の地域取材記録を見ると、奥の空間には別の店舗も登場してきます。
江古田の音大通りで、生活雑貨などを扱う小さな店としてスタート。
店舗の奥行きが広がり、異なるテイストの商品を展開する空間が生まれる。
地域取材記録に、オイルライフの奥で開いた店舗として登場。
手織りや手仕事、雑貨や素材を扱う「ki-to(キイト)」が奥のスペースに開店。
本や自主制作の出版物、雑貨、イベントなどを扱う新たな場所が、店の奥に開店。
オイルライフが23年6か月の歩みに区切りをつける。
この流れは、店舗公式サイトと「練馬・桜台情報局」に残る各時期の記録で確認できます。 [1][5][6]
2021年には、本を楽しむ場所にも
特に意外なのが、2021年3月15日に開店した「百年の二度寝」です。
地域取材記事によると、新刊や古本、ZINEなどを扱うほか、ワークショップや読書会、企画展なども構想された場所でした。 [6]
ZINE(ジン)とは、個人や小さなグループが自主的に制作する冊子のことです。
雑貨を探しに来た場所の奥に、今度は本や表現の世界が広がる。
最初の店が単純に拡大していったというより、奥の空間が時代に合わせて、さまざまなものを紹介する場所へ変わっていったと見るほうが正確でしょう。
ただし、ここで紹介した店舗は過去の営業記録です。現在もそれぞれが同じ場所で営業していることを示すものではありません。
こうして振り返ると、あの不思議に長い店舗には、商品の棚だけでなく、いくつもの時代が重なっていたのです。
中学生だったお客さんが、親になって戻ってくる?

オイルライフが江古田で積み重ねたものは、店の広さや商品だけではありませんでした。
江古田駅北口商店会の店舗紹介には、店とお客さんの長い付き合いを伝える一節があります。
中学生だったお客さんが、やがて母親や父親になってからも店へ来てくれる。
そんな関係が、オイルライフの自慢として紹介されていました。 [3]
中学生が親になる。
言葉にすると短いですが、その間には進学も、仕事も、引っ越しも、さまざまな生活の変化があります。
2003年から続いたお店だからこそ、店を訪れる人の人生にも、長い時間が流れていたことが分かります。
もちろん、何人のお客さんが何年間通い続けたのか、具体的な数字までは確認できません。
それでも、店自身が長く通う人との関係を大切にしていたことは、商店会の紹介から伝わってきます。
お店の場所にも、街の変化が刻まれていた
もう一つ、面白い記録があります。
江古田の商店を記録した地域サイト「江古田:大学と美容院の街」には、オイルライフの所在地である栄町40-13について、以前は「シャロン」というブティックがあったと記されています。 [7]
つまり、この場所も最初からオイルライフだったわけではありません。
ブティックがあり、雑貨屋が生まれ、その雑貨屋が奥へと広がる。
同じ住所でも、時代によって人々が出会うものは変わっていきます。
商店街の歴史は、古い建物や大きな記念碑だけに残るものではないのですね。
一つのお店の住所をたどるだけでも、街の変化が少し見えてきます。
23年6か月の最後に、店が残した言葉
そして、2026年8月29日。
オイルライフは最終営業日を迎えました。
店舗公式サイトには、その日付とともに、長年の営業に対する感謝が掲載されています。 [1]
営業期間は23年6か月。
店主は、さまざまな感情が入り混じり、まだ言葉を整理できない様子を文章に残していました。
そして、ホームページやInstagram、Facebookは残しておくことも伝えています。
閉店の理由について、今回確認した公式の最終日メッセージには詳しい説明がありません。憶測で理由を補うことはできません。
ドイツから届いた「また会おう」
公式サイトの閉店報告には、さらに一つの文章が続いています。
ドイツ・ライプツィヒから、およそ15年間にわたりコラムを寄せていた小林教授からのメッセージです。
公式サイトによると、そのコラムは最終回で93回を数えました。 [1]
雑貨屋の閉店を伝えるページに、ドイツからの長年の寄稿者が登場する。
海外の商品を扱っていた店の物語が、最後には海外から届いた文章につながるのです。
最終回の題名には、ドイツ語の「Auf Wiedersehen」という言葉が使われていました。
別れの挨拶でありながら、再会を願う響きも持つ言葉です。
店を通して生まれた関係が、商品の売買だけではなかったことを思わせる記録でした。
オイルライフの場所と店舗情報
オイルライフが営業していたのは、西武池袋線・江古田駅の北口から徒歩約3分の場所です。
音大通り沿い、東京都練馬区栄町40-13にありました。 [2]
オイルライフ|営業当時の基本情報
- 店名
- オイルライフ(OILife grace&nucleus)
- 所在地
- 東京都練馬区栄町40-13
- 最寄駅
- 西武池袋線 江古田駅北口 徒歩約3分
- 開業
- 2003年
- 最終営業日
- 2026年8月29日(公式サイトの最終日報告による)
- 旧営業時間
- 11:00〜21:00(日曜・祝日は13:00開店)。金曜日は19:00閉店の場合あり
- 主な取扱商品
- 生活雑貨、食器、アクセサリー、ハンドメイド作品、服飾雑貨、アロマ・フレグランス用品など
- 公式サイト
- オイルライフ公式ホームページ
- 現在の状況
- 営業終了
掲載情報について
江古田駅北口商店会のページには、2026年2月時点の営業時間など、営業当時の情報が残っています。また、地域情報サイトには2026年8月2日付の閉店記事もあります。
この記事では、実際の最終営業日については、店舗自身が2026年8月29日に掲載した「最終日」の報告を優先しています。過去の営業時間は現在利用できる店舗の案内ではありません。
長い店の奥にあったのは、23年分の変化だった
最初に気になったのは、入口からは想像できないほど奥行きのある雑貨屋でした。
なぜ、こんなに奥が深いのだろう。
その答えをたどると、2003年の小さな店から、2006年の拡張へ。そして、奥に生まれた手仕事の店や本を楽しむ場所へと話がつながりました。
商品が増えただけではありません。
中学生だったお客さんが大人になり、親になっても訪れる。店の奥では、新しい作り手や表現の場が生まれる。
オイルライフの奥行きは、床の長さだけでは説明できないものでした。
店は2026年8月に営業を終えましたが、公式サイトには、23年6か月の歩みと、最後の感謝の言葉が残されています。
「暮らしに潤いを届ける」という願いを込めた名前。
その意味を知った今、「オイルライフ」という少し変わった名前は、単なる雑貨屋の看板とは違って見えてきます。
そこには、長い時間をかけて、人ともの、人と人をつないできた一軒のお店の記憶がありました。
江古田の雑貨屋の物語を、もう一つ
参考資料・出典
情報確認日:2026年10月26日。
開業や店舗構造、営業終了については店舗公式サイトを優先し、商店会掲載情報と当時の地域取材記録を補助資料として参照しています。
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オイルライフ公式サイト|2026年8月29日 最終営業日の報告
発行:OILife grace&nucleus
2026年8月29日付の最終日報告、23年6か月の営業、公式サイトやSNSの継続、小林教授の最終寄稿を確認。
https://www.oilife.info/
確認日:2026年10月26日 -
オイルライフ公式サイト|About us
発行:OILife grace&nucleus
2003年開業当初の店舗、2006年の奥への拡張、バイヤーによる売り場構成、所在地などの沿革を確認。掲載されている営業時間は営業当時のもの。
https://www.oilife.info/about-us/
確認日:2026年10月26日 -
江古田駅北口商店会|オイルライフ
発行:江古田駅北口商店会
2026年2月掲載。取扱商品、海外買い付け、オリジナル作品、ハンドメイド作家募集、2003年開業、長年通う客との関係を確認。閉店前の掲載情報。
https://ekoda-kitaguchi.com/oilife/
確認日:2026年10月26日 -
練馬・桜台情報局|百年の二度寝@オイルライフ(江古田)、オープン
発行:練馬・桜台情報局
2021年3月15日公開。オイルライフの正式名称、店名の由来、主な取扱商品、店奥にできた本屋の記録を確認。
https://s-nerima.jp/wp/153023
確認日:2026年10月26日 -
練馬・桜台情報局|ki-to@オイルライフ(江古田)、オープン
発行:練馬・桜台情報局
2017年11月25日公開。オイルライフの2006年の拡張、グレースとニュークリアスの売り場構成、奥のスペースに開いたki-toについて確認。
https://s-nerima.jp/wp/113772
確認日:2026年10月26日 -
練馬・桜台情報局|百年の二度寝@オイルライフ(江古田)、オープン
発行:練馬・桜台情報局
2021年3月15日公開。店奥のスペースでの開店、書籍・ZINE・雑貨の取扱い、イベント構想、以前の店舗との関係を確認。
https://s-nerima.jp/wp/153023
確認日:2026年10月26日 -
江古田:大学と美容院の街|江古田駅北口商店会地区
発行:地域情報サイト「江古田:大学と美容院の街」
過去の商店リスト。栄町40-13にあったブティック「シャロン」と、その後のオイルライフの記載を確認。閉店時期について記録間に差異があるため、本文では具体的な閉店年月を断定していません。
https://www.ekoda.org/ekoda/market/ekokita_all.html
確認日:2026年10月26日 -
練馬・桜台情報局|【閉店】オイルライフ(OILife grace&nucleus)@江古田
発行:練馬・桜台情報局
2026年8月2日付の閉店記事。所在地、2003年開業、2006年拡張、その後の店奥の変遷を確認。最終営業日については店舗公式の8月29日付報告を優先。
https://s-nerima.jp/wp/7379
確認日:2026年10月26日
※本記事は公開されている店舗公式情報・商店会資料・地域取材記録をもとに構成したものです。エキリプ編集部が店舗関係者や常連客に独自取材を実施したことを示すものではありません。本文中の商品の取扱い、店内構成、各テナントの活動は当時の記録に基づきます。