東長崎に残るトキワ荘の青春|マンガ家が通った銭湯跡と町中華「松葉」を歩く
東長崎駅の南口から歩いて10分ほど。現在の南長崎には、手塚治虫、赤塚不二夫、石ノ森章太郎、藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄らが若き日を過ごした「トキワ荘」の記憶が、今も街のあちこちに残っています。建物そのものは1982年に解体されましたが、マンガ家たちがラーメンを取った中華料理店「松葉」は現存。銭湯「鶴の湯」や「あけぼの湯」はなくなったものの、跡地や灯籠などに当時の暮らしの痕跡を見ることができます。単なるミュージアム見学ではなく、「漫画の神様たちが普通にご飯を食べ、風呂へ行き、原稿を描いていた街」として歩くと、東長崎の景色が少し違って見えてきます。
いちばん面白いポイント:復元されたトキワ荘だけでなく、マンガ家たちが実際に使った「日常」の場所を歩けること。
点数ではなく、この場所の特徴を6方向の感覚で表しています。
交通の便利さ
東長崎駅南口から主要スポットまで徒歩圏
日常の買い物
トキワ荘とマンガ家の歴史が街に濃く残る
外食・カフェ
松葉や紫雲荘など現存するゆかりの場所がある
子育て環境
住宅街と商店街を歩いて回れる
自然・散歩
昭和レトロ館や復元施設で当時の暮らしを学べる
地域のにぎわい
休日や企画展開催日はミュージアム周辺の混雑に注意
東長崎に何が残っている? 「建物」より面白いのはマンガ家たちの日常
トキワ荘というと、まず思い浮かぶのは木造アパートです。しかし、この街歩きで面白いのは建物だけではありません。
当時のトキワ荘には風呂がなく、住人たちは近所の銭湯へ。腹が減れば町の中華料理店からラーメンを取り、パン屋で安いコッペパンを買い、喫茶店では打ち合わせや原稿仕事をする。締め切りに追われる若者たちの生活圏そのものが、現在の南長崎一帯でした。
「漫画の聖地」なのに、観光地っぽすぎない
東長崎からトキワ荘エリアへ歩くと、大きなテーマパークへ向かっている感覚はあまりありません。住宅、小さな商店、昔ながらの道が続き、その途中にマンガ史の重要スポットが突然現れます。
それが、この街の面白さ。スターになった後のマンガ家を見る場所ではなく、まだ何者でもなかった若者たちが生活していたスケール感を感じられる場所なのです。
マンガ家たちの風呂場だった「鶴の湯」跡
鶴の湯跡
トキワ荘の住人たちが通っていた銭湯。藤子不二雄Ⓐの『まんが道』にも登場します。
一番風呂は午後3時
寺田ヒロオらは午後3時の一番風呂を楽しみにし、アイデアに詰まると風呂へ向かったとも伝えられています。
「鶴の湯」は平成3年ごろまで営業していた銭湯です。豊島区のトキワ荘ゆかりの地案内によると、当時の湯銭は15円。トキワ荘の住人たちが通い、寺田ヒロオたちは午後3時の一番風呂を楽しみにしていたとされています。
豪華な仕事場も個室のバスルームもない時代。原稿に行き詰まれば下駄を履いて近所の風呂へ――そんな生活を想像すると、トキワ荘が急に「歴史上の伝説」ではなく、若者たちのアパートとして見えてきます。
鶴の湯はすでに営業していません。この記事で紹介しているのは「跡地」としての街歩きスポットです。営業中のレトロ銭湯と誤解しないよう注意してください。
「鶴の湯が休みなら、あけぼの湯へ」――もう一つの銭湯の記憶
周辺には「あけぼの湯」という別の銭湯もありました。昭和48年ごろまで営業し、鶴の湯の定休日などにトキワ荘のマンガ家たちが利用していたとされています。
さらに面白いのが、その隣にあった「あけぼのハウス」。石ノ森章太郎はトキワ荘を出た後、1962年からこのアパートに入り、数年間創作活動を続けました。現在、跡地には「区民ひろば富士見台」が建っていますが、庭先には銭湯時代の面影を伝える灯籠が残されています。
建物がなくなっていても、こうした小さな痕跡を探して歩くのが南長崎らしい楽しみ方です。
そして今も食べられる。マンガ家御用達の町中華「松葉」
中華料理 松葉
1950年ごろ創業。トキワ荘のマンガ家たちがラーメンの出前を取った、数少ない現存するゆかりの店です。
“食べられる歴史”
跡地を見るだけではなく、当時のマンガ家たちと同じ街でラーメンを食べられるのが、この散歩の大きな魅力です。
「松葉」は創業1950年ごろ。当時、トキワ荘のマンガ家たちは1杯40円だったラーメンをよく出前で注文していたと豊島区が紹介しています。店内にはマンガ家直筆の色紙が多く飾られ、現在もトキワ荘巡りの代表的スポットです。
『まんが道』をはじめ、トキワ荘文化を描いた作品を知ってから訪れると、町中華の一杯がちょっと特別に見えてきます。
一方、現在の営業時間や売り切れ状況は変わる場合があります。外部店舗情報では昼・夜営業と月曜定休が案内されていますが、訪問当日は最新情報を確認してから向かうのがおすすめです。
食堂だけじゃない。コッペパン、喫茶店、マーケットまで物語がある
菊香堂跡
10円のコッペパンにコロッケやメンチカツを挟むのが定番。赤塚不二夫と石ノ森章太郎が1個を分け合ったというエピソードも残ります。
エデン跡
石ノ森章太郎、赤塚不二夫、水野英子らが打ち合わせや原稿仕事で通った音楽喫茶。2002年に閉店しました。
第一マーケット跡
最盛期には20店舗以上が入り、寺田ヒロオも特売日にコロッケやメンチカツを買っていたとされています。
紫雲荘
仕事が増えた赤塚不二夫がトキワ荘とは別に部屋を借りたアパート。現在も建物が残り、若手マンガ家支援にも活用されています。
なぜ南長崎には、これほどトキワ荘の記憶が残っているの?
トキワ荘は1982年に解体。それでも街が記憶をつないだ
元のトキワ荘は老朽化により1982年に解体され、現在の跡地に当時の建物は残っていません。ところが地域では、記念碑の設置や散策マップ整備などを重ね、マンガ文化を街の資産として残す取り組みが続きました。
現在は復元施設の「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」に加え、昭和20年代後半の戦後マーケット「味楽百貨店」を改装した「トキワ荘通り昭和レトロ館」なども整備されています。
2026年に行くなら、トキワ荘マンガミュージアムもセットで
| 施設 | 豊島区立トキワ荘マンガミュージアム |
|---|---|
| 所在地 | 東京都豊島区南長崎3-9-22 南長崎花咲公園内 |
| 東長崎駅から | 南口より徒歩約10分 |
| 通常開館 | 10:00〜18:00(最終入館17:30) |
| 休館 | 月曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始、展示替え期間 |
| 入館方式 | 予約優先制。空きがあれば予約なしでも入館可能 |
2026年8月13日現在は、特別企画展「生誕90周年記念 つのだじろう なんでも描いてやろう!」を開催中。会期は2026年8月8日〜11月23日で、特別観覧料は大人500円、小中学生100円、未就学児などは条件により無料です。
通常は10:00〜18:00ですが、2026年8月21日〜28日は「夕涼みナイトミュージアム」により12:00〜20:00へ変更されます。8月28日のみ19:00閉館です。訪問日によって時間が変わるため、公式サイトの開館情報を確認してください。
ミュージアムは予約優先制です。予約がなくても人数に余裕があれば入館できますが、週末や企画展目的なら事前予約をしておくと安心です。公式案内では予約は当日朝8時まで受け付けています。
もう少し昭和に浸るなら「トキワ荘通り昭和レトロ館」へ
トキワ荘通り昭和レトロ館は、昭和20年代後半に建てられた戦後マーケット「味楽百貨店」を改装して2022年に開館した施設です。トキワ荘そのものだけでなく、マンガ家たちが暮らした時代の生活文化を知りたい人に相性のいいスポットです。
2026年8月13日現在は企画展「あの頃のあそびとぼくらの時間」を8月30日まで開催。開館時間は10:00〜18:00、東長崎駅から徒歩約13分と案内されています。
東長崎駅から半日で歩くなら、この順番が分かりやすい
西武池袋線から来るなら南口へ。トキワ荘エリアは駅の南側です。
四畳半の部屋や共同炊事場を見ると、その後の街歩きが一気に面白くなります。公式の観覧目安は40〜60分程度です。
復元施設と実際の跡地は別です。銭湯や旧商店の痕跡を追うと、当時の生活圏が見えてきます。
ラーメンを食べながら、数十年前にこの周囲を歩いていたマンガ家たちの暮らしを想像してみる。街歩きの締めとして相性のいい一軒です。
時間があれば立ち寄り、当時の街そのものを知ってから東長崎駅へ戻ると、約半日の散歩になります。
SNS・動画で見る、現在のトキワ荘エリア
東長崎駅との相性は? 椎名町より近い「西武線側の入口」
トキワ荘の歴史では「椎名町」という名称をよく見かけますが、現在のトキワ荘マンガミュージアムへ西武池袋線から向かう場合、東長崎駅南口から徒歩約10分と案内されています。椎名町駅からは約15分のため、距離を優先するなら東長崎が使いやすい入口です。
一方で、椎名町側にもトキワ荘関連のモニュメントや歴史があります。「最短でミュージアムへ行くなら東長崎」「街の歴史を広く歩きたいなら椎名町側も組み合わせる」という使い分けがおすすめです。
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よくある質問
現在は営業していません。トキワ荘の住人たちが利用した「鶴の湯」は平成3年ごろまで、「あけぼの湯」は昭和48年ごろまで営業していました。現在は跡地として巡ります。
中華料理店「松葉」が現存しています。創業は1950年ごろで、トキワ荘のマンガ家たちがラーメンの出前を取った店として豊島区公式の散策案内にも掲載されています。
本物の建物は1982年に解体されています。現在の「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」は、当時の外観・玄関・階段・2階居室・共同炊事場などを再現した施設です。実際のトキワ荘跡地にはモニュメントがあります。
はい。トキワ荘マンガミュージアムは西武池袋線・東長崎駅南口から徒歩約10分です。
予約優先制です。予約なしでも入館人数に余裕があれば入れますが、確実に入りたい場合は公式予約フォームを利用するのがおすすめです。
まとめ|東長崎では「天才になる前の生活」を歩ける
手塚治虫、赤塚不二夫、石ノ森章太郎、藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄――名前だけ並べると、日本マンガ史の教科書のようです。
けれど東長崎・南長崎を歩くと、その印象が少し変わります。
15円の銭湯へ行き、40円のラーメンを取り、10円のコッペパンを食べ、喫茶店で原稿を描く。後に巨匠と呼ばれる人たちも、ここでは締め切りと生活費に追われる若いマンガ家でした。
復元されたトキワ荘だけを見るのではなく、鶴の湯跡、あけぼの湯跡、松葉、菊香堂跡、エデン跡、紫雲荘へ。そんなふうに街を歩いてみると、東長崎は「マンガの聖地」という言葉よりもう少し生々しい、漫画家たちの青春が生活の中に残る街として見えてきます。
